2021年10月27日 1696号

【明日をつくる なかまユニオン<第1回> 職場改善を提案したら解雇?!/外食チェーン「なか卯」で声上げる/非正規労働者の労働環境変える】

 誰でも一人でも入れる地域の労働組合「なかまユニオン」や「首都圏なかまユニオン」等は、コロナ禍で非正規の労働者らが不当・違法な労働条件に置かれている今、相談や争議など労働者の命と権利を守っている。本連載はその奮闘の日々を綴る。

解雇される理由はない

 なかまユニオンのAさんは、1年有期の常用アルバイトとして大手外食チェーン「なか卯」で5年以上勤務していた。仕事の引継ぎなどの職場改善を求めるメモを掲示したところ、それを嫌悪した会社は退職を強要し、後に解雇を通告。解雇理由を明らかにすることなく、社会保障等の手続きも長い間放置する不誠実極まりない対応を続けた。

 10月1日大阪地方裁判所で、Aさんの不当な解雇撤回、従業員としての地位確認を求める裁判の第3回口頭弁論が開かれた。傍聴席はなかまユニオン組合員で満席、多くが廊下に並んだ。

 短時間の弁論終了後、報告集会で中井雅人弁護士は「会社側は、あたかもAさんが店長等への私怨のために誹謗中傷したかのように主張している。Aさんは労働環境をよくしようと思って提案をしたのであって、会社の言い分は到底受け入れられないし、きちんと主張していく」と現状説明。

 Aさんがやむにやまれない思いで掲示した労働環境の改善要求について、会社側は準備書面で、これを単なる陰口、不満と描く。「他の従業員に不安を与えた、職場秩序を乱した」と決めつけて解雇理由とし、「個人的な恨みを晴らすという意図に基づく掲示に業務上の根拠は全くなかった」と断言している。

 ここが今後の反論のポイントであり、従業員からの職場環境改善提案に誠実に向き合うことなく環境改善に取り組まず、あれこれと難癖をつけて彼を解雇した会社の責任を強く追及していかなければならない。

 Aさんは「『解雇される正当な理由なんてない』と友人も言っている、引き続き頑張りたい」と決意を表明した。

店前で初の宣伝行動

 同日、組合員らは初めてのなか卯前街頭宣伝行動に臨んだ。原告のAさんが5年間働いてきた梅田東店前の交差点を中心に「なか卯は不当解雇を撤回せよ!」と書いたのぼり旗を立て、ビラ配布、マイク宣伝。昼時で人通りが多く、若い人もビラを受け取っていた。

 原告のAさんは、昨年9月シフト外しに遭ってから1年ぶりに勤務店近くを訪れ、店舗が見通せる場所で自らのぼり旗を持って立つ。Aさんは「店で働いていた時には、まさか自分が店の前で宣伝行動することになるとは思っていなかった。思ったより多くの人がビラを受け取ってくれて良かった」と手応えを語った。

 次回弁論は、11月29日11時30分から大阪地裁609号法廷。ユニオンは多数の傍聴支援を呼びかけている。

非正規労働者が声を上げるために 井手窪啓一なかまユニオン執行委員長

 2020年10月30日、外食チェーンなか卯において、有期雇用で5年以上働いていたAさんが不当解雇されたため、現在、解雇撤回を求めて大阪地裁で闘っています。なか卯は、株式会社ゼンショーホールディングスの連結子会社で、丼・うどんをメイン商品とする外食チェーンです。同社は正社員250人に対し非正規労働者9600人と、まさに非正規労働者によって成り立っている会社です。

 解雇の原因として問題にされているのは、昼・夕方帯から夜・深夜帯への食材の準備などの引き継ぎが不十分であることを改善してもらいたいとの要望を、もっぱら深夜帯で働いていたAさんがメモにまとめて引き継ぎとして伝えたことです。会社は、要望の中身に耳を貸すことは一切なく、上司・管理職に全面的に服従しないという1点を問題にして、解雇に踏み切ったのです。この闘いは、声を上げる非正規労働者の排除を許さない闘いです。みんなで勝利させましょう。



MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS