2021年10月27日 1696号

【コラム見・聞・感/線路横断を送検する前に/政府は交通政策総点検を】

 山添拓参院議員(共産)が埼玉県内の鉄道線路(勝手踏切=jを横断、9月に書類送検された件が波紋を呼んでいる。

 法律に基づいて国が正式に踏切と認めるものには4種類ある。警報機・自動遮断機を両方持つものが第1種、警報機・手動遮断機を持つものが第2種、警報機のみで遮断機なしが第3種、そして警報機・遮断機どちらも持たないものが第4種。第2種は、踏切警手(操作員)を常駐させなければならず、国内にはすでに現存しないと思われる。

 山添議員が横断したのはこのどれにも該当しない。地元住民が横断のため板を敷くなどして踏切代わりにしている無許可の勝手踏切≠セ。全国に1万7千か所もある。

 正式に踏切として認めてもらえるよう鉄道会社や行政と交渉すれば、と考える人もいると思うがそう単純ではない。踏切新設を認めない国の方針がネックになっているのだ。

 外部と遮断され、独占的線路使用を許されている鉄道にとって、外部からあらゆるものが侵入してくる踏切はいわば「傷口」だ。鉄道事故の大半が踏切事故である現状からも削減に勝るものはない。また、鉄道は「急ブレーキをかけて600b以内に停止できるか」を基準に最高速度が決められているが、踏切がない区間では特認でこの規制を解除できる。列車のスピードアップになるし、事故も踏切待ちも渋滞も解消する。地元には公共事業が落ち、自民党は利権が票につながる。このため、鉄道や道路を地下化・高架化する工事が「踏切解消」名目で進められてきた。

 だがそれはあくまで都市部の話。地方では高架化・地下化工事もなく、踏切新設も認められない。踏切まで遠回りをするのが辛い高齢者、線路脇に新たに住宅を建て、線路のある側から近道で外に出たい地域住民などは勝手踏切$ン置くらいしか方法がなく、鉄道政策の矛盾といえる。

 踏切新設は、運転士にとっては注意を向ける場所が増える事実上の労働過密化を意味する。だが、列車本数も運転士の負担も大都市より少ない地方路線では勝手踏切の「認可」も今後の検討課題だろう。

 山添議員が線路横断したのは昨年11月。10か月も経っての送検は、「アベ友」山口敬之のレイプ事件もみ消しで昇進した中村格・新警察庁長官からの悪質かつ手荒な「就任挨拶」との見方が強まっている。(水樹平和)
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