2021年11月05日 1697号

【岸田vs野党共通政策 ただちに消費税廃止を 大企業・金持ち優遇の不公平税制是正で可能】

 岸田首相は、再分配$ュ策について「消費税を財源とすることは考えていない」と言う。1年前の総裁選時に「必要なら消費税を引き上げ」としていたことを考えると、いつ消費税増税に豹変するとも限らない。

 消費税10%となった2019年10月、IMF(国際通貨基金)は30年までに15%、50年までに20%への消費税引き上げを日本に提言した。この外圧を利用する動きが出るかもしれない。

 逆に、野党が求める消費税減税は一律給付金と同じ効果を持つ。では、消費税減税や再分配を実行するための財源はどこにあるか。

所得「1億円の壁」

 税制は、公平かつ中立、簡素でなければならず、負担能力に応じて税金を納めることが原則とされる。この原則がないがしろにされてしまい、市民の税への不公平感が高まっている。

 その一つが「1億円の壁」といわれるものだ。所得税の負担率が年間所得1億円を境に下がっていくことを表現している。

 株式譲渡などの所得は1億円を超えると急増する。株を売って得た利益や株の配当金が多くなっているのに、なぜ所得税の負担率が下がるのか。株のもうけや配当金を他の所得と切り離して一律20%(復興税率は除く)の税率にしており、負担能力に応じたものになっていないからだ。こうした金融所得課税は富裕層優遇の典型例だ。すぐに解消すべきなのに岸田首相は先送りをしてしまった。

 さらに、大企業は不公平な税制で大儲けしている。トヨタ自動車は2008年度から12年度の5年間、法人税を払っていなかった。一方、その5年間に配当金を1兆円以上払っていた。

 トヨタは、▽受取配当金を一部課税しない▽外国にある子会社から支払われた配当金を実質的な課税としない▽試験研究費を税額控除する―など大企業に有利な税制を駆使して法人税ゼロにした。他の大企業も優遇税制を活用して23・2%の法人税率より少ない税金しか払っていない。

 大企業と富裕層が不公平な税制の恩恵を受けてますます富み、その穴埋めが消費税増税で行われてきた。


是正すれば財源38兆円

 この不公平な税制を是正し、大企業と富裕層に適正に課税をしなければならない。では、それでどれほどの財源を生み出せるのか。

 富岡幸雄・中央大学名誉教授は、法人税制の再建で約9兆円の増収が見込まれ、これを消費税減税に充てることを提言する。不公平な税制をただす会は、38項目の不公平税制の是正で約38兆円(17年度、国税と地方税)の財源が生まれることを主張している。

 自民党公約は、金融所得課税強化の先送りで「分配強化の原資をどう調達するのかは不透明」(10/13東京新聞)と、再分配の裏付けがないものとなっている。

 市民連合と4野党の共通政策提言には「所得、法人、資産の税制、および社会保険料負担を見直し、消費税減税を行い、富裕層の負担を強化するなど公平な税制を実現し、また低所得層や中間層への再分配を強化」とある。自民党が示さない財源の根拠が示されている。

 不公平税制の是正だけで再分配と消費税廃止が可能となる。大企業と富裕層への適正な課税を徹底すれば、さらに財源が増え、積極的な社会福祉政策も財政再建も十分実現できる。
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