2021年11月05日 1697号

【新自由主義の申し子=非正規雇用に触れず 岸田「新しい資本主義」のウソ】

 岸田首相は、所信表明演説(10/8)で「新自由主義的な政策は富める者と富めない者の深刻な分断を生んだ」とし、「新しい資本主義の実現を目指す」と述べた しかし、市場原理や効率を重視する新自由主義がどのような弊害をもたらしたのか、何をどう変えようとするのか、岸田から具体的な説明は何もなかった。

格差、貧困つくり出す

 新自由主義の特徴を最もよく表す政策は、非正規雇用である。それが社会にもたらした影響の大きさは計り知れないものがある。

 非正規労働者は1990年は男女合計833万人だったが、2020年に2・5倍の2090万人に増えた。非正規労働者の比率は37%にあたる。いまや5人に2人が非正規雇用だ。

 95年、日経連(現・経団連)が労働者を「長期能力活用型」「高度専門能力活用型」「雇用柔軟型」の3種類に分けて雇用すべきと提言を出して以来、非正規雇用が急激に拡大した。

 「長期能力活用型」「高度専門能力活用型」が企業にとって有用不可欠な人材であるのに対し、「雇用柔軟型」は低賃金で雇用の調整弁に使える便利な存在とされた。それが非正規(契約社員、派遣社員、パート・アルバイト等)である。

 非正規雇用政策は、格差を広げることを承知で政府とグローバル資本が共同で作った収奪の仕組みに他ならない。この政策は、格差拡大、慢性的な内需不足、少子化という重大な変化を社会にもたらした。04年には小泉内閣が製造業への人材派遣を解禁し、非正規の業務範囲をさらに広げた。

コロナ禍が直撃

 コロナ禍によって最も大きな被害を被ったのも非正規労働者だ。

 厚労省が発表している「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について」(10/15現在)によれば、累計解雇等見込み労働者数は、11万8591人だが、その中の非正規労働者数は5万4305人である。

 20年には、就業者数は前年比48万人減の6676万人と8年ぶりに減少し、雇用者数は31万人減の5973万人と11年ぶりの減少。一方、完全失業者数は80万人増の256万人と調査史上最多となり、増加幅も最大になった。

 さらに求職活動を諦める人が増える中で、労働力人口が前年比18万人減の6868万人と8年ぶりに減少したが、非労働力人口は、7万人増の4204万人と8年ぶりの増加となった。

 非正規労働者数は長期的に増加を続けてきたが、20年には前年比75万人減の2090万人と大幅に減少した。うち、男性が26万人減の665万人、女性は50万人減の1425万人。コロナ禍で非正規女性労働者が雇用の調整弁にされたことを物語っている。


元凶は労働者派遣法

 非正規雇用政策の推進力となってきたのが労働者派遣法(86年施行)だ。雇用主ではない第3者に指揮命令権を委ねることを可能とした労働者派遣法は、製造業にまん延していた偽装請負についてグローバル資本の犯罪行為を免罪し、雇用確保を求める偽装請負告発者たちの要求をことごとく拒絶する根拠となってきた。

 野党共通政策が掲げる非正規雇用の処遇改善の実現を迫り、岸田政権が手をつけない非正規の元凶、人間をモノ扱いする労働者派遣法の即時廃止を求めよう。
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