2021年11月05日 1697号【土木屋奥間の正義の闘い（１）／沖縄南部/あの熊野鉱山で不法投棄／ドローンが捉えた決定的瞬間】 |
沖縄・辺野古新基地建設に土木技術者の視点から問題点を指摘し、反対運動の中で貴重な役割を果たしている奥間政則さん。ドローン（無人航空機）を飛ばし、数々の不正を暴いてきた。辺野古基地工事現場から流出する汚濁水、沖縄南部の土砂採取場の無残な姿は衝撃だった。今号から、奥間さんの正義の闘いを本人に報告してもらう。第１回は、沖縄県糸満市の熊野鉱山で目撃した驚くべき事件。辺野古埋め立て用土砂の採取予定地の一つとして注目を集める熊野鉱山は、やはりあやしかった。  遺骨収集途上の地９月２日、熊野鉱山の状況を確認しようと現地に向かった。12時ごろ到着。すぐにドローンで撮影を開始した。その時、工事用重機が動く音が聞こえてきた。音が聞こえる方向に移動すると、熊野鉱山の掲示板付近で掘削用建設機械が穴を掘っているのを確認した。熊野鉱山は遺骨収集もまだ終わっていない場所だ。沖縄県が出した措置命令（＊）は採取前に遺骨の有無を確認するよう求めている。重機が動いていることを不審に思い、気づかれないようできるだけ距離を保ちながら撮影を始めた。 すると、バック走行の軽トラックが急いで重機の傍らに停車。荷台から箱のようなものを重機が掘った穴の中に落とした。時間は12時25分ごろ。明らかに不法投棄をする瞬間だ。軽トラックが移動すると、すぐに重機が穴を埋め始めた。その一部始終を撮影することができた。かなり手際がいい。何度も不法投棄を繰り返してきたと思われる。 その日のうちに地元紙の沖縄タイムス、琉球新報と沖縄平和市民連絡会の北上田毅氏に撮影した動画をメールで送った。９月６日には、糸満市の生活環境課に出向き動画を見せた。「県の保健所にもこの情報を共有したい」と言われ、快く動画を提供した。  一歩及ばず市民団体「島ぐるみ会議いとまん」の方からアドバイスがあり、その日の午後、県の農政経済課を訪ねた。動画を見せると環境整備課に案内され、そこでもこの動画を見せたところ、すでに保健所からこの情報が入っていた。糸満市がいち早く動いてくれたようだ。９月７日の午後３時過ぎ、県の環境整備課から電話があった。警察にも通報して調査を検討しているとのことだった。私が提供した動画から「明らかな不法投棄」と判断して摘発する準備をしていた。 翌９月８日、県は抜き打ち調査に動き出した。午前、県の職員２人が熊野鉱山に向かったところ、現場には作業員が２人いた。不法投棄の疑いがあることを伝えると、作業員は「間違えて埋めたので掘り起こして持ち出した」と弁明。県職員は、くまなく掘り返させたが、結局何も出てこなかった。12時前、県の職員は電話で、ことの顛末（てんまつ）を悔しそうに報告してくれた。 業者には不法投棄の目撃情報がどこからか入っていたようだ。寸前で取り逃がしてしまったことが私としてもとても悔しかった。 ごまかしは許さない動画を改めて見直した。箱を投棄する前に、誰かに見られていないか辺りを窺（うかが）う作業員の様子がはっきり映っていたので、「間違えて埋めた」という話はまったくのでたらめであることがわかる。９月29日の沖縄タイムスの記事によれば、「重機に使用する潤滑油を土中に一時的に保管した」と作業員は言ったようだが、重機で念入りに突き固めて埋めているので、「一時的に保管」ということもまったくの嘘である。記者はこのことを業者に質すべきだ。 沖縄タイムスの報道や北上田氏の働きかけにより、比嘉瑞己（みずき）県会議員が10月４日の県議会土木委員会の場でこの問題を取り上げたことで翌日の沖縄タイムスには、ドローンが捉えた不法投棄の瞬間の写真を使った記事が載った。 ＊ ＊ ＊ 遺骨収集も終わっていない問題の場所で、自分の土地だからと不法投棄すること自体、断じて許されることではない。南部の遺骨混じりの土砂を辺野古に使わせないためにも、この悪徳業者が行った不正行為を全国に広げてもらいたい。 私は２０１８年に沖縄ドローンプロジェクトを立ち上げ、実際にドローンを飛ばして政府の不正を暴いてきた。ドローン規制法による弾圧に屈することなく、今後も土木屋としての誇りをもって、不正を暴くドローン活動を続けていく。 （続） ＊措置命令 沖縄県は６月14日、自然公園法に基づき、糸満市の沖縄戦跡国定公園内で採取を予定する業者に対し、戦没者の遺骨の有無を確認することに加え、採取区域に近接する慰霊碑周辺の風景に影響を与えないよう措置を取ること、周辺と同じ植物を用いて原状回復すること、これらの措置を採取前に県に報告し、協議するよう命じている。    |