2021年11月05日 1697号

【みるよむ(602)2021年10月23日配信 イラク平和テレビ局in Japan イスラム霊廟と国家の癒着 ―税免除で巨大な利権あさり―】

 イラクでは、イスラム教の霊廟(れいびょう)が信者からの寄付などを投資に利用して膨大な利益を上げている。2021年9月、サナテレビはこの問題を取り上げた。

 番組はアル・アッバス霊廟の例を上げる。この霊廟は「病院や農場やレストランや印刷などの多数の投資事業を所有する。大規模な事業を始めて、半ば総合産業の国家のようになってしまったことで『スポンサー国家』と呼ばれている」。

 霊廟が支配する事業が何百もあり、国家から低価格で払い下げを受けている。また、同じシーア派のイランからの輸入品への関税免除など「イスラム教の事業活動に特権」を受けている。

 信者から集める多額の寄付金の行先も疑問だらけだ。イマーム・フセイン霊廟で集められた資金は推定毎月10億ディナール(約9350万円)だ。一方、巨大な霊廟の職員らに支払う賃金20億ディナール以上は「国家から出ている」。つまり、この霊廟だけでも毎年120億ディナール(約11億円)もの寄付金収入をまるごと投資事業につぎ込み、利権を作り出している。

 同霊廟の幹部は「18年間の収益は石油輸出総額の6日間分を超えない」とごまかす。だが、その額は約535億円に上るのだ。

社会サービスと関係なし

 資金は貧困者への社会サービスや無料医療サービスに提供と説明されるが、サナテレビの調査は、一切関係がないことを明らかにした。さらに、霊廟の収入に税金はかからない。

 イスラム教霊廟は国家から特権を受け営利事業に投資して膨大な利益を上げている。これがイスラム主義政党の資金源となり、政府や政治家と癒着する利権構造を作り出している。

 こうした実態を報道すること自体が不当な弾圧を受け、時には命の危険にさらされる。サナテレビは不当な社会を変えようと勇気をもって訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

 
MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS