2021年11月12日 1698号

【2021衆院選結果/「政権交代」対決構図つぶした維新/強固な野党共闘支える運動を】

脅威だった野党共闘

 「政権交代」を合言葉に臨んだ衆院選。結果をみれば、自公政権への強い批判の声をそのまま議席に結びつけることはできなかった。

 事前のメディア予測では議席増だった立憲民主党が13議席減、共産党2議席減と立憲野党は伸びなかった。逆に、大幅に議席を減らすと予想されていた自民党は15議席減、公明党3議席増とあわせて与党12議席減ですんだ。この動向に影響を与えたのが、日本維新の会の存在だった。大阪の地域政党に過ぎなかった維新は、自民、立憲に次ぐ第3の勢力となった。

 維新は野党共闘に対して「立憲、共産の野合」と非難し与党の補完勢力としての役割を果たすとともに、「改革」を連呼し政権批判を口にした。「与党も野党もダメ」の売り込みが、現状への不満、批判票の一定の受け皿になった。

 市民と野党の共闘が奮闘した東京12区でも、与野党対決の構図に維新が割り込んだ。前回2017衆院選での公明候補11万2千余票は10万1千票に減ったが、野党共同候補も8万3千票から7万2千票弱。初登場の維新は8万票を取った。

 しかし、維新の「改革」は幻想にすぎない。維新は新自由主義を純化させた最悪の利権集団だからだ。行政の公的役割を切り捨て、民営化一本槍。安倍・菅政権がつくり出した貧富の格差を拡大し、コロナ禍における医療体制不備を促進するものでしかない。さらに維新は改憲勢力だ。今回、自公と維新を加えると3分の2議席に達する。

 維新は陰に陽に、こうした立場を利用して改憲と新自由主義政策推進へ岸田政権の背中を押すことだろう。

推進力は市民の運動

 では野党共闘は不発だったのか。決してそうではない。小選挙区289のうち野党統一候補は7割を超えた。与党か野党かを選択する候補者2人の決選区は99にのぼった。成果はあがっている。例えば東京都ブロック。前回17年では25選挙区中5議席にとどまっていた野党の議席を9に伸ばした。全区2人対決となった秋田、福島では2議席増やした。同じく一騎打ちの神奈川13区、現職の自民党幹事長甘利明を破った。

 これまで早々と自民党候補者に「当確」が出ていた選挙区でも接戦に持ち込んところは多い。東京など主要都市部でしか形が見えなかった「市民連合」が市民の運動を背景に統一候補擁立へと動きをつくることができたからだ。東京8区は象徴的だった。政党間の駆け引きの混乱を市民の運動がリードし、勝利した。

 自民党は小選挙区制の下で、有権者の3割に満たない支持で7割の議席を確保してきた。この「数の力」に思い上がり、政治腐敗を極めたのが安倍・菅政権だった。常に政権交代が起きる緊張感を持たせるには、野党共闘以外に道はない。それを支える市民運動の必要性がますますはっきりした選挙だったと言える。これは維新の幻想を振り払うためにも欠かせない。


共通政策実現を

 しかし政治の大きな変革を起こすには、より多くの市民が政治参加することが求められている。

 「野党転落」と自民党に危機感を抱かせたのはほんの3か月前のことだ。ところが、投票率は55・93%。戦後3番目の低さだった。半数に近い有権者が投票をしない状況がなお続いている。なぜ、多くの市民は投票に行かなかったのか。怒りは消えたのか。決してそうではない。

 選挙に行かないと決めている人にその理由を聞いたアンケートがある(10/29BuzzFeedNews)。「投票したい候補者・政党がない」とともに「投票しても変わらない」。政府のコロナ対策・経済補償には7割前後が「効果的ではなかった」と批判的な回答を選んでいることを見れば、怒りや不満はあるが、現状を変えられるという期待は持てなかったということだ。

 これに応えようと進められてきたのが市民と野党の共闘であった。今回、政権交代実現を訴え共通政策を掲げ、効果をあげた。ただ、「政治は変えられる」期待につなぐにはまだ弱点がある。連合の組織票に頼る立憲民主党が共産党との共闘批判に動揺したことも一つだ。メディアもまた立憲と共産の違い≠執拗にキャンペーンした。ブレさせない支えがいる。

 市民の健全な怒りを議席へとつなげるには、政策転換の展望と可能性を指し示す以外にない。国会での追及と市民運動を結びつけ、共通政策20項目の実現に全力をあげ続けよう。
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