2021年11月12日 1698号

【子ども脱被ばく裁判・控訴審/子どもの命を護るのは大人の責任/仙台の反原発運動とつながって】

 10月22日、子ども脱被ばく裁判・控訴審の第1回期日が、仙台高裁で開かれた。福島県内の公立小・中学生の原告が市・町に安全基準を満たした施設で教育を実施することを求めたことに対し3月1日に、福島地裁が根拠もなく「確認の利益を欠く」「年20_シーベルト基準は直ちに不合理とは言えない」「違法な侵害があるとは認められない」と不当判決を行ったことに控訴したものだ。

仙台でも支える動きが

 弁論の前には仙台市の繁華街で、子ども脱被ばく裁判支援では初めてのデモが色とりどりの横断幕や衣装で取り組まれ、約80人が参加。「子どもを被曝から守ろう」「放射性廃棄物の焼却を止めよう」等のデモコールは、仙台の支援者がリードした。先立つ10日には仙台市内で「子ども脱被ばく裁判控訴審・一審報告会」が、リモートも含めて約100人で行われた。

 運営を担ったのは、宮城県内のさまざまな反原発運動団体の有志で結成された「『子ども脱被ばく裁判』を支援するみやぎ連絡会」のメンバー。その思いを、同会連絡窓口の服部賢治さんは「福島の隣の宮城も、3・11原発事故以降、同じ苦しみを背負っています。これは自分たちの問題でもあり、一緒に解決していかないといけません」と語る。

 報告集会には、宮城で女川(おながわ)原発反対運動や大崎放射性廃棄物焼却反対運動をしている人たちも含め約90人で会場はいっぱいとなった。

 原告の荒木田岳さん(福島大学教授)は「裁判は、遠くなると普通は参加者が減るのに、逆に増えて励まされます」と感謝を伝えた。50年に及ぶ反原発の闘いの歴史を踏まえ、地元宮城の市民運動と「子ども脱被ばく裁判」がつながったのだ。

大人の義務を問う

 弁護団は一審で検討が不十分だった論点として、放射性物質の環境基準や内部被ばくのリスク等を強調する。

 放射線被ばくの心配をしなくてもよい安全な場所での学校教育を求めた行政訴訟(子ども裁判)では、▽学校における子どもの安全基準について放射性物質の基準がなく、定めるべきことを怠っているのは国の責任であること▽学校周辺で未だに放射線管理区域の基準を超える汚染が広範に残り、土壌中の放射性セシウムが不溶性微粒子となって子どもが土埃(つちぼこり)を吸い込んで内部被ばくを招く危険性にさらしていること▽国の答弁書では「年1_シーベルト程度の被ばくは法的保護に値しない」と違法な主張をしていること−等を指摘。

 また、3・11原発事故当時、子どもたちを被ばくさせた責任を問う国家賠償請求訴訟(親子裁判)では、事故の情報を県民に速やかに正確に伝え、住民の避難の判断に資するべき国・県が、山下俊一(長崎大学教授)によって“この程度は心配ない”と住民を汚染地域にくぎ付けにしたこと等を指摘した。

私の命は私のものだ

 今野寿美雄原告団長が意見陳述で、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の情報が浪江町に知らされていなかったために、我が子が無用の被曝をさせられた悔しさを述べ、国と県の事故対応と言い逃れを批判。「子どもたちは自分を護り切れません。子どもたちを護るのは私たち大人の責任です。それは最低限の義務です」との言葉に、傍聴席からは拍手が沸き起こった。

 原告の一人である佐藤美香さんは、難病に加えて新型コロナで入院したことで、死をも覚悟したと言う。「本当に“私の命は私のものだ 私は生きる”でした。仙台高裁へは、来たくても来れなかった原告のお母さんの代表として来ました。次男が来年3月に中学校を卒業するので、陳述の機会があれば、彼の気持ちも伝えたい」と、今後への決意を語る。

 次回期日は、来年2月14日14時30分。



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