2021年11月19日 1699号

【辺野古新基地建設/岸田政権も強行姿勢/東アジアの緊張緩和へ建設阻止を】

 岸田文雄首相は「聞く力」を看板に首相の座についた。だが沖縄の声は聞き置くだけ≠ナ済まそうとしている。衆院選結果にかかわらず、辺野古新基地建設反対の民意は変わっていない。普天間基地の無条件・即時返還を要求し、沖縄の基地負担解消と東アジアの平和と安定への運動を強めよう。



 安倍内閣の外相時代に辺野古新基地建設を推進した岸田は、その姿勢を全く変えていない。沖縄防衛局は10月23日、K8護岸延伸工事を入札公告した。同護岸は19年3月に工事着手したもの。全長515mのうち、250mが完成している。今回の入札公告は残りのうちの190m分だ。この部分はサンゴの移植が必要だが完了していない。岸田政権は安倍・菅政権同様、あくまでも辺野古新基地建設を強行しようとしている。

 だが、一方で沖縄の強固な反対世論は認識しており、衆院選で自民党候補は辺野古の争点化を恐れて言及せず、議席をかすめ取った。

民意は新基地建設反対

 衆院選は自民2人、オール沖縄2人で議席を分け合った。だが、辺野古新基地建設反対の民意が衰退したのではない。

 衆院選前に実施された全県世論調査では、「反対」「どちらかといえば反対」が56・9%、「容認」「どちらかといえば容認」36・8%を大きく上回った。年代別でもすべての年代で反対が容認を上回った。

 辺野古を含む選挙区・沖縄3区では「反対」「どちらかといえば反対」が54・5%、「賛成」「どちらかといえば賛成」が42・9を上回っている。

 特筆すべきは、辺野古新基地完成後に返還とされる普天間基地を抱える沖縄2区だ。「反対」「どちらかと言えば反対」が59・7%。「容認」「どちらかと言えば容認」が35・5%。政府は「普天間基地の危険性除去」を表むきの理由として新基地建設を強行してきた。にもかかわらず辺野古をふくむ選挙区や全県に比べて、最も新基地建設に反対し容認との差も大きい。

 衆院選結果にかかわらず沖縄の民意は「辺野古新基地建設反対」だ。


戦争政策推進継続の狙い

 岸田自民は、安倍・菅がやり残した戦争政策推進へのハードル突破を狙っている。軍事費の対GDP1%枠撤廃、敵基地攻撃能力の保持、9条改憲だ。対中国封じ込めと海外派兵のフリーハンドを得ることを求めるグローバル資本に応えるためだ。

 日米豪印4か国は、中国の「一帯一路」に対抗しクアッド(日米豪印戦略対話)を結成。対中包囲網を強めている。陸上自衛隊と米国陸軍は6月、「オリエントシールド(東洋の盾)21」とよぶ実践訓練を過去最大の3000人規模で実施。米軍のパトリオット部隊が初めて南西諸島に展開した。さらに陸自は9月15日から2か月にわたり10万人超規模の大規模演習を続けている。

 NATO(北大西洋条約機構)諸国もクアッドに呼応して、インド太平洋地域への関与を強める。5月にフランスが、9月にはオランダと英国が日本に艦船を送り込んだ。とりわけ、英国は最新鋭空母クイーン・エリザベスを中心とした空母機動部隊をおしたてた。そしてドイツが異例のフリゲート艦太平洋地域派遣を実施。今月、日本に寄港し、岸信夫防衛相はこれを歓待した。

 政治の分野でも今月3日、EU議員団が台湾を訪問し中国を刺激している。

 辺野古新基地建設強行と南西諸島への自衛隊シフトはこれらの動きとリンクしている。鹿児島から台湾へと延びる奄美・琉球列島を対中国海洋進出の防波堤として自衛隊と米軍が共同で使用する。米国が1990年代後半から始めている米軍再編により在沖海兵隊が移転すれば、自衛隊が辺野古新基地をはじめ沖縄島の軍事基地を中国包囲と海外派兵の核とするつもりだ。

沖縄連帯強化を

 衆院選を経て、自公・維新の改憲・戦争政策推進勢力が議席の3分の2を占めた。運動の焦点は明らかだ。アジア太平洋地域の軍事的緊張を高める辺野古新基地建設を阻止することだ。

 翁長県政を引き継いだ玉城デニー知事も自公政権の戦争政策と対峙してきた。当面の焦点は、辺野古新基地の設計変更申請不承認だ。これまで自公政権は基地建設をめぐる沖縄県の行政処分に対して私人を装い不服申し立てや訴訟を連発してきた。次の申請却下時に同じことをさせない沖縄連帯運動の強化が必要だ。
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