2021年11月19日 1699号

【明日をつくる なかまユニオン<第2回> 東リ偽装請負事件控訴審逆転完全勝利/派遣先との直接雇用を認める/労働者派遣法「40条の6」を初適用】

 11月4日、大阪高裁での東リ偽装請負事件(注)控訴審判決は、昨年3月神戸地裁が原告5人の請求をすべて棄却した不当判決から一転、全員の直接雇用と賃金支払いを認めた逆転勝利判決となった。報告と原告の喜びが寄せられた。

 11月4日、東リ偽装請負事件の控訴審判決の言い渡しがあった。

 「主文1、原判決を取り消す。2、労働契約上の地位にあることを確認する」。一審神戸地裁判決を取り消す逆転完全勝利判決だ。誰もが判決に感動した。

 判決において、偽装請負(違法派遣)状態で働かされていた派遣労働者5名(L.I.A労働組合)が、派遣先東リ株式会社と直接の雇用関係があると認定されたのだ。違法派遣を許さず、労働者を使用して利益を上げている企業が雇用の責任を負うべきであるという「直接雇用の原則」が貫徹された画期的な判決だ。

 リーマンショック後の大量の派遣切りとその後の幾多の裁判を受けて2015年10月、派遣労働者保護のために改正された労働者派遣法40条の6「直接雇用申し込みみなし」制度が適用された日本で最初の勝利判決となる。

 法律が改正されたものの、その後労働行政が大きく後退し、かつては「偽装請負」と認定されていたような事案を労働局が偽装請負であると認定しなくなり、これまでこの「直接雇用申し込みみなし」制度は力を発揮することができなかった。

 東リ工場の偽装請負状態でも、兵庫労働局は「偽装請負状態はなかった」と判断し、一審神戸地裁も「偽装請負とは言えない」と原告敗訴の判決を言い渡した。

 今回の控訴審判決は、工場の労働実態を詳細に検討して「偽装請負であった」と正しく認定した。違法派遣状態で働かされている全国の多くの労働者に大きな希望を与える判決と考える。

 東リはただちに5人を直接雇用し職場に戻すべきだ。L.I.A労組を勝たせる会、なかまユニオンは、職場復帰を実現するまで今後も共にたたかう。

(L.I.A 労組を勝たせる会幹事・井手窪啓一なかまユニオン執行委員長)

(注)東リ偽装請負事件

 建材メーカー東リ(兵庫県伊丹市)の下で長年、違法派遣状態だったL.I.A.社員が労働組合を結成して、2017年直接雇用を求め、労働契約申し込みみなし制度を行使。しかし東リが組合員5人だけを採用拒否したことに対し、直接雇用を求めたもの。

判決は非正規労働者の希望の光に 東リは上告を断念せよ

 2021年11月4日、控訴審判決の言渡しで、裁判長が主文を読み上げる前に、「傍聴者の皆さんは終わるまで騒がない、声を出さないでください」と前置きしました。聞いた瞬間、また敗訴か?との思いが頭をよぎりましたが、一審の判決を棄却し、私たち原告の完全逆転勝利という判決を勝ち取りました。

 職場を追放されてから4年7か月。労働委員会闘争と裁判闘争を、失業保険受給や派遣、アルバイト等で生活を何とか維持しながら闘い続け、やっと司法が弱者を救済するという判決。真っ当な判決と言えばそうであるものの、最近の司法判断には疑問を持っていたので、正直に良かったと感慨深いものがあります。これで、違法状態で働かされている全国の非正規労働者が直接雇用を勝ち取る、一筋の希望の光になれればと思います。

 また、東リに対しては、高裁判決を真摯に受け止め、最高裁への上告は断念し、私たちに謝罪し判決を履行することを願うばかりです。

(L.I.A労働組合執行委員長・藤澤泰弘)

みんなでかちとった勝利 確定に向け次の闘いへ

 2017年11月に神戸地裁へ提訴してからちょうど4年、ようやく大阪高裁で勝利判決を得ることができました。これまで闘いが継続してこれたのは、多くの方々の支援があったからにほかなりません。どうもありがとうございました。勝利判決が出された時、支援者の方々と喜びを分かち合うことができ、この勝利は私たち当該5人だけではなく、みんなで勝ち取ったものだと改めて思いました。

 しかしこの喜びも束の間、次の闘いに進まなければなりません。勝利判決を確定させ、5人が東リに戻るための闘いです。その日が来るまで、なお一層のご支援、よろしくお願いします。

(L.I.A労働組合副委員長・有田昌弘)



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