2021年11月19日 1699号

【未来への責任(335) ダーバン宣言から20年】

 今年はダーバン宣言から20年に当たる年である。衆院選結果に気分は落ち込み、植民地主義清算の運動の展望も見失いがちだ。それ故に、このことを想起しておきたい。

 2001年8月31日〜9月8日、国連は南アフリカ・ダーバン(アパルトヘイト発祥の地)で、反人種主義世界会議を開催、宣言と行動計画を採択した。宣言では、「14 植民地主義が人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容をもたらし、アフリカ人とアフリカ系人民、アジア人とアジア系人民、および先住民族は植民地主義の被害者であったし、いまなおその帰結の被害者であり続けていることを認める。植民地主義によって苦痛がもたらされ、植民地主義が起きたところはどこであれ、いつであれ、非難され、その再発は防止されねばならないことを確認する」と規定した。また、「106 いつどこで起きたものであれ、過去の犯罪や悪事を想起し、人種主義的悲劇を明白に非難し、歴史の真実を語ることが、国際的な和解ならびに正義、平等および連帯に基づく社会の創造にとって必須の要素であることを強調する」とも宣言した。

 ダーバン会議の前にはアジア、アフリカ等の各地域で準備会議が開催された。アジアでは、01年2月19〜21日、テヘランで開催した。採択されたその宣言では「50 植民地支配やその他の形態の外国支配あるいは外国占領、奴隷制、奴隷売買、そして民族浄化など、人種あるいは民族優位を基礎にした政策や慣行を遂行した国家は、そのような政策や慣行の被害者に対する責任をとり、賠償すべきことを認識する」とまで述べていた。

 ダーバン宣言が採択された時、米国・イスラエルは会議を途中からボイコットしていた。英、仏、オランダ、ベルギーなどは宣言にあからさまに反対を表明していた。

 しかし、それから20年。

 仏マクロン大統領は、「植民地化」は「人道に対する罪」に当たる「蛮行」だと明言している。イタリアは、過去のリビア植民地支配による損害について謝罪し、補償として50億ドルのインフラ整備資金支払いを約束した。英国、オランダ、ドイツは、植民地支配していたケニア、インドネシア、ナミビアで起こった独立運動を弾圧する中で起こした反人道的不法行為(拷問、虐殺・ジェノサイド等)の事実を認め、謝罪し(遺憾の意を表明)、賠償(復興・支援金)を支払うことになった。

 ダーバン宣言は生きており、植民地支配の責任は問われ続けている。

 「慰安婦」、強制動員問題は「日韓」問題ではない。植民地主義清算と、犠牲者の人権回復の問題だ。岸田政権は、これに誠実に向き合うべきだ。

(強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク 矢野秀喜)

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