2021年12月03日 1701号

【みるよむ(603)2021年11月20日配信 イラク平和テレビ局in Japan 不正と暴力が支配 イラクの国民議会選挙】

 2021年10月10日、イラク国民議会選挙が行われた。しかし、それは不正がはびこり、政党の私兵によって支配されたものだった。今回の映像では、この選挙の実態を報告している。

 総選挙で当選者の顔ぶれや政党の獲得議席数に変化があっても、政治の基本構造は変わらない。政治家は宗派主義・民族主義勢力をバックに利権の確保に走り、市民の生活や安全など何も考えていない。

 たとえば、「権利運動」の議員グループはヒズボラの傘下にいる。ヒズボラはレバノンのイスラム教シーア派政治・武装組織でイラン、シリアから援助を受けていることは周知の事実だ。

 選挙運動の中では、「社会サービス」と称して、自家発電機を修理したり、コンサートを開いたりと選挙に利用することが横行している。要は公費を使って有権者を買収しているのだ。

 選挙の不正もひどくなっている。今回、有権者の証明に生体認証カードが認められたが、生体認証カードを売って複製したカードが25万4千枚に達したとのうわさが流れたという。 

 ある議員は「選挙委員会で400万枚の電子カードが失われ行方不明になったが、政党ブロックの中でなのか、それを手に入れた連中に配られたのかもわからない」と語る。これで公正な選挙ができるはずがない。

批判すれば命の危険

 市民がこうした腐敗政治家を批判したらどうなるか。どの選挙区や候補であろうが、批判を向ければ命を危険にさらすことになる。実際、国会議員の背後にいる私兵を批判したためにある大学教授は殴られたという。

 今回のイラクの総選挙は政府の発表でも投票率が40%程度だった。実際にはもっと低いだろう。何百万票もの不正操作が行われ、批判者には暴力が振るわれているからだ。サナテレビはこの実態を明らかにして、不当な政治構造を変えようと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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