2021年12月24日 1704号

【沖縄防衛局 辺野古不承認に不服申し立て/これまでの繰りかえしにはならない/軟弱地盤・活断層は消えない】

 沖縄県が下した辺野古新基地設計変更不承認に対し、沖縄防衛局がまたもや行政不服審査法(行審法)を悪用し、国土交通大臣に不服を申し立てた。県の決定には従わないというのだ。政府・防衛省はこれまで何度も沖縄県の決定を踏みにじってきた。想定されたこととはいえ、また同じ手を繰り返すのかと怒りが湧く。

 だが、今回はこれまでとはいくつかの点で異なる。政府の思い通りには進まない。

工事は続けられない

 その一つが「執行停止」が役に立たないことだ。

 2018年、翁長雄志(たけし)知事が亡くなった直後の埋め立て承認撤回処分(謝花喜一郎副知事)の時、沖縄防衛局は審査請求とともに執行停止の仮処分を求め、埋め立て土砂の投入を強行してきた。

 行審法の悪用は、私人なりすまし≠セけではなかった。処分の執行停止(第25条)を悪用したのだ。

 仮処分は、回復できない重大な損害が生じないよう、結論が出るまでの間、一時的に行政処分を保留にする措置。沖縄防衛局が訴訟ではなく行審法を使ったのは、即効性のある「執行停止」が利用できるからだった。

 さらに行審法の規定では審査庁にはなれない国交大臣と結託した。翁長知事が入院中に、知事の職務代理者(富川盛武副知事)とは別の副知事に公有水面埋立法(公水法)の権限を委任していた。副知事が下した処分を審査するのは最上級行政庁である知事(第4条第4項)であり、主任の大臣(国交大臣)ではない。

 審査庁になりすました国土交通大臣はすぐさま「撤回の執行停止」を行い、19年4月に採決するまでの間、取り返しのつかない土砂投入を容認した。行審法をことごとく誤用、悪用した罪は大きい。

 今回、沖縄防衛局は「執行停止」を求めていない。県の「不承認」を停止しても、設計変更が承認されるわけではないからだ。つまり、軟弱地盤対策など設計変更後の工事には一切着手できないことになるのだ。

「適正な運営」を妨害

 今回、地方自治法の特例により審査庁となる国交大臣は何を審査するのか。行審法の目的は「国民の権利救済」と「行政の適正な運営」の確保。国交大臣は県の不承認が「適正な運営」ではないことを立証しない限り、取り消しの裁決は行えない。

 環境保全と災害防止が「十分配慮されていない」とする県の不承認理由は適切だ(前号2面参照)。根拠は公水法第4条。ここには「承認してはならない」項目がならぶ。県は審査にあたり、さらに細かく具体的な項目を定めており、不承認理由4はこの審査項目に沿って記述されている。

 沖縄県が他の都道府県に比べ特別な審査項目を定めているわけではない。公水法が1973年に大改訂されたときに当時の建設省などが通達として示した、いわば国の定めた審査基準だ。

 県はこの項目に従って審査した結果、地盤の状況が分からないのに護岸が安全だとは認められないと判断した。沖縄防衛局は調査の必要はないと突っ張っているが、これが民間事業者だったら、絶対に免許を得ることはできない対応だ。

 国交大臣が「行政の適正な運営」を審査する意味があるとすれば、国であろうが民間であろうが全国同じ基準で判断されているかという点である。国交大臣が仮に、沖縄県の不承認を取り消すとすれば、全国どこにでも安全の裏付けのない構造物が造られることを認めるということだ。

 大正時代に制定された公水法は、戦後のコンビナートなど沿岸部埋め立て乱造による環境破壊、災害発生に無力だった。大改訂はそれを契機に行われた。今度は政府が法を骨抜きにし、環境保全、災害防止を無力化させようというのである。

 だが、例えどんな屁理屈をつけようとも、大浦湾の軟弱地盤や活断層は消えてなくなりはしないのだ。

サンゴ判決反対意見

 これまでの繰り返しにはならないもう一つの状況の変化がある。沖縄県と国の訴訟において司法は国の誤った主張を追認してきたが、サンゴ移植をめぐる最高裁判決では5人中2人の裁判官が県の主張を認めた。埋め立て実施が不確かだから、工事のためのサンゴ移植を許可しないのは適切。まともな判断がやっと最高裁の裁判官から示されたのだ。

 沖縄県が国交大臣採決の取り消しを求めた裁判はまだ続いている。18年の埋め立て承認撤回が有効となる可能性は残されている(12月15日控訴審棄却判決)。

 これまでの繰り返しには決してならない。沖縄県の不承認を支持し、承認撤回をかちとる闘いを進めよう。



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