2021年12月24日 1704号

【ミリタリー・ウォッチング 住民自治で軍事化に抗する 石垣市「自治基本条例」の攻防】

 政府が軍事化をすすめるうえで大きな障害となるのは“住民自治”である。この事実を露骨なまでに浮かび上がらせたのは、沖縄県石垣市の「自治基本条例」をめぐるこの間の動きだ。

 石垣島など南西諸島へのミサイル基地建設の危険性については何度か伝えてきた。石垣島では、反「オール沖縄」を掲げる右派の中山義隆市長と与党勢力が沖縄防衛局とタイアップし、市民の声を無視してついに2019年3月1日、予定地の島中央部平得大俣(ひらえおおまた)地区で工事着工を強行した。

 しかし、この暴挙に至るまで住民が黙っていたわけではない。18年12月、若者を中心に立ち上がった「石垣市住民投票を求める会」が有効署名1万4263筆(有権者の約4割弱)を集め、市長に対し住民投票を直接請求したのだ。

 石垣市自治基本条例は「有権者の4分の1以上の連署をもって請求すれば、市長は所定の手続きを経て実施しなければならない」と定めているが、多数派を占める市議会与党は、翌19年2月、条例の恣意的な解釈で住民投票条例を否決。「求める会」は、市長に実施を義務付ける裁判を起こしたが、地裁、高裁、最高裁はいずれも「市長に住民投票の実施義務があるのか」といった重要な争点への判断は一切示さず、「行政訴訟の対象にあたらない」という「入り口」論で逃げた不当判決となった。しかし、住民は新たに当事者訴訟を起こし、住民投票実施へ運動を続けている。

 一方、基地推進勢力による「自治基本条例」への攻撃は止まらない。石垣市議会は今年6月28日の本会議で、「市自治基本条例の一部を改正する条例案」を与党の賛成多数(賛成10、反対8、退席2)で強行可決した。「改正」点は、(1)条文中の「市民」の定義を石垣市内に住所を有する者とすること(2)市民による住民投票の請求など住民投票に関する条文(第27、28条)の全削除(3)自治基本条例を「市政運営の最高規範」とする規定の削除―の3点。住民投票に関する条文をそっくり削除した。

条例廃止狙う攻撃

 今回は、「一部改正」だが、陸自配備計画の賛否を問う住民投票について「地方自治体の権限を越えるものである(防衛と外交に関して地方自治体は国の決定に従い、協力する責務があるとする自治否定論)」(自治基本条例に反対する市民の会)と強弁する彼らは「自治基本条例」そのものの廃止を狙っている。

 全国でも最も先進的な条例の一つである石垣市「自治基本条例」を守るとともに、ミサイル基地建設に反対する住民の闘いに注目し、全力で支援しよう。

 豆多 敏紀
 平和と生活をむすぶ会 
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