2021年12月31日・2022年1月7日 1705号

【厚労省ヒアリング 「37号告示で判断」を明言させ 直接雇用へ画期的前進 東リ高裁判決を力に】

 東リ偽装請負事件大阪高裁判決(注)を踏まえ、安倍政権下で大きく後退した労働行政を是正する第一歩として「非正規労働者の権利実現全国会議」主催の厚生労働省ヒアリングが12月16日、衆院第一議員会館で開催されました。

 東リ事件と全港湾名古屋支部・日興サービス分会(日検偽装請負事件)の当該を先頭に、非正規全国会議に所属する両争議弁護団、支援の各ユニオン、雇用共同アクションに参加する労組をはじめ野党4党国会議員、マスコミ関係者など、オンラインを含めて約40名が厚労省担当に問いただし、貴重な成果を獲得しました。

 1986年労働者派遣法の制定から今日まで、派遣法の制限を逃れるため、実態は派遣でありながら企業間の請負契約を装う「偽装請負」が横行してきました。労働者派遣と請負との区別については、86年の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(告示37号)で偽装請負が認定され、厚労省による是正指導が積極的に行われた時期もありました。

 しかし、その後安倍政権時代の2013年にこの告示に対する「疑義応答集」(第2集)が出され、偽装請負の認定に各地の労働局は消極的になりました。

 村田浩治東リ争議弁護団長も報告していましたが、「37号告示は疑義応答集によって後退した」というのが、各地の労働局の認識となっているのが現状です。

 今回のヒアリングで、厚労省で直接担当する中央需給調整指導官が「37号告示は後退していない。同告示にしたがって判断する。その旨、全国に指導する」と明言したのは、本当に大きな成果です。消極的な労働局の姿勢を転換させる可能性が広がっています。

 37号告示に従って、偽装請負がきちんと認定されれば、請負発注者(派遣先企業)との直接雇用が展望されるのはもちろんですが、そこまで届かなくても、偽装請負労働者の労働条件の大幅な改善が期待できます。偽装請負すなわち派遣状態となりますから、20年4月の改正派遣法が適用され、派遣先正社員との均等・均衡待遇を求めることができるからです。

 今回の言質(げんち)をしっかり文書通知するよう求めるとともに、意義をどんどん広げる必要を感じています。東リ高裁判決の波及力をヒシヒシと感じる交渉でした。

(L.I.A 労組を勝たせる会幹事・なかまユニオン執行委員長 井手窪啓一)

行政が動けば解決 転換を求め訴えた

 厚労省ヒアリングで、東リ偽装請負争議の当該として発言の機会をいただきました。厚労省の役人に伝えたかったことは、労働局が適切に違法企業を監督指導すれば、労働者が苦労をしてまで裁判を闘う必要はないということです。

 私たちのケースでは、兵庫労働局に偽装請負を申告したものの「違法は認められなかった」とされ、それが神戸地裁の不当判決にも影響したと考えられます。厚労省が真に労働者保護を考えていたなら、東リの問題をはじめ、これまでに多くの労働者が救われていたに違いありません。

 そういう意味を込めて、私は「収入の少ない非正規労働者が裁判するのは難しい。行政がやってくれれば、すぐに解決する」と訴えました。厚労省の役人がどう思っているかは知る由もありませんが、私たちの高裁勝利をきっかけに、労働行政が良い方向に変わっていくことを期待しています。そうなれば、私たち5人がやってきたことも報われると思います。

(L.I.A労働組合副委員長 有田昌弘)

(注)東リ事件大阪高裁判決

 建材メーカー東リ(兵庫県伊丹市)で違法派遣状態のL.I.A.社員が労働組合を結成し労働契約申し込みみなし制度を行使したが拒否され、組合員5人は職場を奪われた。5人は裁判に訴え、一審神戸地裁では棄却だったが、大阪高裁は11月4日、直接雇用を認める逆転完全勝利の判決を行った。



 
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