2022年1月14日 1706号

【米軍基地由来のコロナ感染広がる/出入国フリーの地位協定が元凶】

 沖縄の米軍基地で新型コロナウイルスの大規模なクラスター(感染者集団)が発生している。12月15日以降の在沖米軍基地内の新規感染者数は9施設で計832人となった(1月3日現在)。主な内訳はキャンプ・ハンセン512人、キャンプ・フォスター93人、嘉手納基地82人など。

 コロナ感染は基地の外にも広がっている。米軍関係者を除く沖縄県の直近1週間の新規感染者数は、人口10万人あたり25・79人で、全国で突出して多い。県の担当者は「基地での感染が広がった結果、市中感染に至ったと考えている」と話す(12/28共同)。

 実際、市中感染が進んでいるとみられるオミクロン株の遺伝子を調べたところ、感染経路が分かっていない複数の人から、基地労働者と同じ系統が確認された。

 在日米軍基地でのクラスター発生は沖縄だけではない。横須賀基地(神奈川横須賀市)で80人、三沢基地(青森県三沢市)では82人の感染者が1月4日に発表された。岩国基地(山口県岩国市)はさらに深刻で、米軍関係者の感染(12月20日以降)は累計424人となった。

 岩国基地は海上自衛隊が一部共同使用しているのだが、案の定、米軍施設を使用した後の隊員2人からオミクロン株への感染が確認された。海自の守永哲也広報室長は「同じ敷地内にいるので、米軍から感染した可能性はある」(12/31中国新聞)と話した。

 しれっと語っているが、これは重大な発言だ。この12月、在日米軍と自衛隊は全国各地で合同軍事演習をくり返していた。つまり米兵から自衛隊員へというルートで、コロナ感染が日本全国に広がっていてもおかしくないのである。

「水際作戦」に大穴

 在日米軍クラスターの背景には、日米地位協定の問題がある。地位協定9条2項により、米軍の構成員には「出入国自由」の特権が与えられている。日本政府の出入国審査を受けることなく、日本国内の米軍基地に到着したり飛び立ったりしているということだ。

 この場合、検疫手続きは米側に委ねられている。米軍は日本の「水際対策」に協力するようなことを言ってきたが、大嘘だった。昨年9月以降、日本への出国時と入国直後のPCR検査を行っていなかった。待機期間中の基地内での行動制限も行っていなかった。

 そもそも米軍は感染状況の公表に消極的だった。感染者が増えた基地名や部隊名を明らかにすれば、戦力ダウンの状態を知られてしまうとの認識からだ。またしても軍事優先の論理が住民の生命・安全をないがしろにしている。

 「水際対策」に米軍特権という大穴が開いている事態を黙認してきた岸田政権も同罪だ。「同盟強靭化」が聞いてあきれる。

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