2022年02月18日 1711号

【ウクライナへの軍事介入をやめよ/停戦合意の誠実な履行を】

「軍事侵攻」

 ウクライナをめぐり軍事緊張が高まっている。「ロシア軍10万人がウクライナ国境付近に集結」との報道が繰り返され、いまにも軍事侵攻があるかのような憶測記事が飛び交っている。ロシアは否定しているが、報道はエスカレートするばかりだ。

 米バイデン政権は2月2日、ウクライナの隣国ポーランドとルーマニアに米兵を派遣することを明らかにした。もともと欧州には米軍7万人が配置されており、そのうち6千人が東欧にいる。さらに数千人を増派するという。経済制裁(国際決済システムからの締め出し)にも言及し、ロシアを追いつめている。

 米政府のウクライナ支援は並々ではない。昨年12月、2億ドル(230億円)の軍事援助(武器、弾薬提供)を実施。さらに1月21日、下院に提案された「ウクライナ主権防衛法」は軍事援助を含む5億ドルの追加融資を可能とする。ウクライナには過去1年間で6億5千万ドル以上の軍事援助を行っているが、イスラエル、エジプトに次ぐ3番目に多い額になっている。

 米ロ対立は何が問題になっているのか。


NATO拡大

 ウクライナをめぐる問題は複雑だが、1つはウクライナ東部ドンバス地方(ルガンスク州、ドネツク州)の分離独立問題だ。2014年2月、経済低迷の不満を背景に米政府が右派勢力に資金援助し親米政権を成立させると、3月にはロシアがウクライナの自治共和国だったクリミアを編入、4月ドンバス地方がウクライナから独立宣言。以後、内戦状態になった。

 19年に政治腐敗の批判の中でゼレンスキーがウクライナの新大統領になると、停戦協議は進んだが、21年10月、政府軍がドローン爆撃に踏み切り、再び戦闘が始まる。この動きに連動するようにロシア軍の脅威が報道され始めた。

 ロシアのプーチン大統領は「軍事侵攻はしない」と明言しつつ、もう一つ別の問題に言及している。「ウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟がレッドライン(越えてはならない一線)」。つまり、ウクライナがNATOに加盟しない限り、侵攻はしないということだ。

 ロシアはなぜウクライナのNATO加盟をおそれるのか。

 1949年に米英主導で結成されたNATOは、社会主義国ソ連(当時)に対する「反共封じ込め」を目的とした軍事同盟だった。結成当初12か国であったものが、現在30か国に広がっている。ソ連崩壊後、東欧諸国が欧州の経済圏に飲み込まれる中で加盟していく。

 NATOは軍事同盟であり、ロシアにむけミサイルを配備している。ロシアにとって、NATO加盟国が東に拡大してくることは、ミサイルが近づいてくるのと同じ意味なのだ。

「強い指導者」

 昨年末の米ロ首脳会談でプーチン大統領は「NATO不拡大の法的保証」を求めた。米政府は取り合わなかったものの、協議は拒否していない。先に軍事行動を起こした国が非難を浴びるのは明らかだ。それを百も承知で、強気の姿勢を取り続けているのは、「強いリーダー」をアピールする意味もあるからだ。

 支持率低迷にあえぐバイデン、ゼレンスキー、長期政権を狙うプ―チン。どの国の統治者も同じだ。だが紛争解決は軍事的威圧ではできない。まずドンバス地方での停戦合意をはかることだ。

 15年、57か国が参加する欧州安全保障協力機構(OSCE)の下で、独、仏、ロシア、ウクライナが署名した。停戦と自治権尊重の合意がなされたが、ウクライナ憲法の改正など未完の事項がある。住民投票で決するにしても、銃弾が飛び交う状態で真っ当な民意を示すことなどできない。冷戦時代の遺物、対ロシア軍事同盟NATOはすぐにも解消すべきだ。

  *  *  *

 日本政府は、米政府の軍事挑発を支持する姿勢を示している。1月21日のオンライン首脳会談で、岸田文雄首相とバイデン大統領は「いかなる攻撃に対しても“強い行動”をとること」について意思疎通を図ると確認しあった。米政権に合わせ「強い姿勢」を示した。

 だが世界中で軍事挑発行動に非難の声が上がっている。アメリカ民主主義的社会主義者(DSA)国際委員会は米政府の軍事介入に反対し、NATO拡大をやめろと声明を出している。日本政府は軍事挑発に加担するな。戦争屋の挑発を抑え込むには、国際的な連帯行動が不可欠だ。
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