2022年06月24日 1728号
【みるよむ (625) 2022年6月4日配信 イラク平和テレビ局in Japan 100万人の国内避難民 安全な帰還と生活の保障求める】
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イラクはISIS(いわゆる「イスラム国」)の暴力支配から解放されて何年もたっているはずだ。ところが、国内の避難民キャンプにはいまだに100万人もの市民がとどまっている。2022年3月、サナテレビはこうした避難民キャンプを取材した。
映し出される避難民の姿に、現在まだこれほど多くの人びとがキャンプ暮らしなのかと驚かされる。
理由は2つある。1つは北部シンジャル市のように町が破壊され、人が住めない場合。しかも、国際機関や世界銀行が復興のために提供した資金を腐敗した政治家が横取りしているという。もう1つは、ISISが追い出された後に、別の宗派の私兵がやってきて住民の農地や家を奪い地域を軍事拠点にしていることだ。
ある男性は「私たちには家がありません。故郷もありません。自分の運命がもうわかりません。宗派の私兵はISISから解放してくれたはずです。ところが今はその私兵に占領されている」と訴える。
私兵に虐げられる避難民
運よく帰還できたとしても、宗派の私兵に金銭を強要され、理由もなく逮捕され、行方不明者も出ている。医療、教育、電気などの社会サービスもなく、仕事の機会も見つからない。
さらに、本人は無関係でも親族の誰かがISIS関係者であると、宗派の私兵などに殺害されることがある。様々な宗派の勢力争いによって帰還できないこともある。
サナテレビは、これでは生きる糧と展望を失った人びとの中から犯罪行為に至る者も出るだろうと指摘する。キャンプの中で曇りのない目でカメラを見つめる避難民の子どもたちの将来を思うと、状況の深刻さに暗澹(あんたん)となる。
腐敗した政府は100万人もの避難民が出ている状況を放置したままだ。市民は、避難民の安全な帰還と生活の保障を求めている。
(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)
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