2022年07月08日 1730号

【22参院選/安倍より危ない岸田改憲/改憲勢力を落選させよう】

 22参院選は後半戦。物価高に対応できない岸田政権に市民の批判票が集中することを期待する。もう一点、忘れてならないのは選挙結果次第で一気に加速しかねない「改憲」策動だ。改憲勢力には、自民・公明の与党に日本維新の会、国民民主党も加わる。この4党が改選82議席に1議席上積みすれば、参院でも改憲発議に必要な166議席を得ることになる。改憲推進のNHK党(非改選1議席)を加えれば、上積みもいらない。改憲勢力の現有議席を奪いとらねばならない。

「来春国民投票」と維新

 選挙戦スタートを切る党首の第1声には、争点をどこにおくのか、各党の構えが表れる。NHKの分析(6/22)では、9党押しなべて「物価高騰対策」。一方「憲法」は、社民党福島瑞穂党首が16回、共産党志位和夫委員長が6回、自民党岸田文雄総裁は1回。他の党は皆無だった。ほとんどの党が選挙公約に改憲の是非について掲げているものの、選挙戦での比重は低いと見ている。

 実際、参院選公示前の世論調査(NHK6月10〜12日)では、最も重視する政策課題を有権者に聞いたところ、トップは経済政策41・9%、「憲法改正」は4・9%だった。



 では「改憲」の是非が投票先の選択基準にならないのかといえば決してそうではないし、そうあってはならない。選挙結果がその後の動向を大きく左右するのがこの「改憲」だからだ。争点にならなくても、改憲勢力が発議議席を確保してしまえば、一気に「改憲」が動き出す。

 公示前の党首討論会(6/21日本記者クラブ主催)で維新の松井一郎代表は「来春の統一地方選挙に合わせて国民投票をすべきではないか」と岸田をあおった。維新は自らの改憲案に「9条改正」と「緊急事態条項」を追加し、いまや改憲最強硬勢力になっている。

 岸田は松井が迫った国民投票の時期には答えなかったが、18日のネット討論会で「できるだけ時間をかけず国民に選択の機会をつくるべく国会としても努力しなければならない」と早期発議への決意を述べている。

 17年政調会長就任会見で「9条改正は考えない」と断言していた岸田だが、政権維持のためならどんな変節もいとわぬ男だ。今は保守層の取り込みとともに、「改憲首相の栄誉」を手に入れる絶好の機会だと意欲を燃やしているに違いない。

「改憲は現代的課題」

 岸田の松井への答えは「改憲内容で一致できるかが発議のポイント」。改憲政党間の合意の促進を強調した。岸田はどんな合意を進めたいのか。党首討論の2日後、毎日新聞は「緊急事態条項の議員任期延長 改憲4党認識一致」(6/23)とのまとめ記事を出した。9条でなくても緊急事態対応で合意形成が進んでいることを思わせる誘導記事だ。

 自民党の改憲案4項目(自衛隊明記、緊急事態条項創設、教育の充実、合区解消)のうち「9条改正」には公明党が難色を示している。9条が無理なら、緊急事態条項創設で合意できればそれでよいということだ。

 緊急事態条項は司法権、立法権を行政府が掌握する内閣総理大臣独裁体制を可能にするものだ。毎日の記事は、「国会議員の任期延長」の合意に限定しているが、決してそんなことでは済まない。

 自民党は「自主憲法制定」を改憲の大義に掲げてきた。いわゆる占領軍押し付け憲法論だ。だが、岸田は「極めて現代的課題だ」と今日的改憲の意義を語る。

 ウクライナ戦争を最大限利用し、戦争への備えを正当化する岸田政権は、戦時内閣が全権を掌握できる規定を必要としている。ウクライナのゼレンスキー大統領のように緊急事態を宣言し、総動員体制を敷く権限を手に入れたいのだ。

 9条改変が改憲の仕上げであることは間違いない。ただ、その主な目的であった集団的自衛権行使については、戦争法を強行成立させクリアした。他国への攻撃を合法化してしまった。だが今後、軍事費を倍増させ世界第3位の軍事大国化を狙う好戦勢力には9条「戦力を保持しない」のままでは、いかにも具合が悪い。逆に言えば、9条は軍拡の足かせになっているということだ。

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 「改憲は悲願」と力を入れた安倍時代に比べ、岸田改憲は「ソフトムード」でやってくる。だが、岸田は日米軍事一体化を進め、アジア版NATO(北大西洋条約機構)形成の中軸的役割を果たそうとしている。戦争国家への道を突っ走っていることに違いはない。

 緊急事態条項創設、9条改変への意欲を隠さない岸田改憲への警戒は決して緩めてはならない。平和主義を掘り崩す改憲の企みを断ち切らねばならない。



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