2022年07月08日 1730号

【22参院選 物価高放置する岸田政権 消費税廃止 賃上げは待ったなし】

 7月10日投開票の参院選で岸田インフレ≠ニ称される物価高が急速に焦点化している。6月11〜13日の共同通信世論調査で、食料品などの値上げを「打撃」とする割合が77・3%を占め、物価高を考慮した投票をするかどうかの質問に「考慮する」は71・1%に上った。

市民無視の政府と日銀

 物価高対策は緊急の課題だ。参院選を前に岸田首相も「食料品やエネルギーの物価動向を注視し、きめ細かく切れ目なく対応」(6/21総合対策本部)と口にはする。だが、岸田の認識は「G20の半数以上が食品価格の上昇率6%を上回っており、わが国は相対的に低い水準だ」(6/13参院決算委員会)と全く危機感に欠ける。日銀は大規模金融緩和の継続を決めている。これは、円安と物価高への対策をとらないことを意味する。

 一方、大規模金融緩和による株高と円安は、グローバル企業にかつてないぼろ儲けをもたらした。上場企業の2022年3月期決算の最終利益は、前期比83・9%増の約36兆円と過去最高を更新している。グローバル資本の利益優先の岸田政権は、円安で輸入品が値上がりし、物価高が引き起こされ市民生活を直撃しても平然と無視しているのだ。

低所得層ほど深刻

 物価高の影響はとりわけ低所得者層に大きい。なかでも電気やガス代などエネルギー関連品目は生活に不可欠で、深刻さは所得に左右される。所得が低くなるにしたがい、家計に占めるエネルギー支出の割合が高まる。内閣府の22年1月試算(図1)では、所得水準が最も高い「第5分位」の層にとって収入に占めるエネルギー支出の負担増の割合は約0・3%。それに対し、最も低い第1分位では0・9%と3倍にもなる。

 食料品(生鮮食品を除く)の価格上昇による負担増を見ても、第1分位は収入の0・16%だが、第5分位では収入の0・06%にすぎない。内閣府でさえ「物価高による負担増にも大きな格差があり、所得が低く貧しい人びとにより重くのしかかっている」と指摘せざるをえない。



 岸田は、物価高「対策」として、石油―ガソリン価格の抑制が柱と強調する。石油元売り各社への補助金のことだ。消費者や末端業者への救済策ではなく、「原油価格高騰対策ではなく、石油業界支援策だ」と批判されるしろものだ。事実、石油元売り大手3社は、22年3月期決算で「資源高で純利益過去最高」(図2)となり笑いが止まらぬ一方、石油燃料を使用する中小事業者や運送関連業者などからは悲鳴が上がっている。

 さらに、「ガソリン補助の恩恵は電気代の値上がりで打ち消されかねない」(4/27日経)との指摘もある。家計支出では電気代とガス代でガソリン代の約3倍となっており、公定価格である電気・ガス代への対策が緊急に必要だ。


経済構造の根本的改革へ

 あるエコノミストの試算によれば、「資源高・円安がこのペースで進むと、家計の負担は22年で1世帯当たり約7・3万円、低所得世帯(年収300万円未満)は約5・8万円の負担増になる」(ダイヤモンド・オンライン5月25日号)という。これは、消費税の3%引き上げに相当する。物価が上がると消費税収入も増大し、政府の収入が増える。物価高に有効な手を打たない岸田政権は隠れた増税を行っているに等しい。消費税減税・廃止は待ったなしなのだ。

 グローバル資本と世界の超富裕層に莫大な富が集中し、貧困層との格差は拡大の一途だ。現在の世界的物価高も構造的なものである。ロシアへの経済制裁が事態をさらに深刻化したが、放置すれば物価高は今後も続く。ただちに消費税減税・廃止を求め、同時に最低賃金はじめ賃金や年金引き上げなどで所得を増やすことが不可欠となる。そのための経済構造の根本的な改革を求めなければならない。
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