2022年07月08日 1730号

【消費税の使途は社会保障限定?/平気で嘘をつく高市、岸田/大企業・富裕層減税の穴埋め】

 高市早苗・自民党政調会長の発言が炎上している。NHKの討論番組で「消費税が法人税の引き下げに流用されているかのような指摘は事実無根。デタラメを言うのはやめていただきたい」と威嚇したのである。「デタラメを言うな」とデタラメで反論するとは、厚顔無恥にも程がある。

目的税ではない

 問題の発言は6月19日放送のNHK『日曜討論』でとびだした。れいわ新選組の大石あきこ政審会長が「数十年にわたり法人税は減税、お金持ちは散々優遇してきた。消費税減税だけはしないのはおかしい」と自公政権を批判すると、高市は色をなして反論した。

 「れいわ新選組の方から、消費税が法人税の引き下げに流用されているかのような発言がこの間から何度かあったが、全くの事実無根でございます。消費税の使途は社会保障に限定されている。地方分も社会保障にしか使えない。デタラメを公共の電波で言うのはやめていただきたい」

 高市ほど目立ってはいないが、岸田文雄首相も同じことを言っている。参院選公示前日(6/21)に行われた公開党首討論で「消費税は法律上、社会保障目的税として位置づけられています」と述べ、消費税減税を求める意見を一蹴した。

 政調会長と総裁が言ったのだから、これは党の公式見解とみてよい。ならば、デタラメを言っているのは自民党のほうだ。消費税は特定の経費に充てる目的をもって課される租税、すなわち目的税ではない。地方消費税を含めて、使途を特定しない一般財源に区分されている。

 たしかに、消費税収の使途は法律で「社会保障4経費」に限定されている(消費税法第1条の2)。しかしこれは消費税率を引き上げる際に盛り込まれた方便にすぎず、財務会計上はそうなっていない。

 自民党の主張が本当なら、消費税収の増加は社会保障費の増加に直結するはずだ。実際はどうか。消費税率を5%から8%に引き上げた際(13年度→14年度)、消費税収は5・2兆円増えた。だが、社会保障費は1・4兆円しか増えていない。社会保障費にほとんど使われなかったのだ。

負担の転嫁は明白

 では何のために使われたのか。大企業・富裕層減税の穴埋めである。法人税の基本税率は消費税導入時の1989年度は約40%だったが、段階的に引き下げられ、現在は23・2%である。所得税・住民税も高額所得者に有利なように累進性が緩和されてきた。

 これらの税収は当然減ったが、1990年度と2020年度を比較すると、国の税収額はほぼ同じである(60・1兆円→60・8兆円)。変わったのは構成割合だ。所得税収が26兆円→19・2兆円、法人税収も18・4兆円→11・2兆円と減少した。これに対し、消費税収は4・6兆円→21兆円と激増している。

 数字は正直だ。大企業や富裕層の税負担(法人税・所得税)が政策的に軽減され、その分が中低所得者層の家計負担(消費税)に転嫁されたことは明白だろう。このからくりを自民党としては知られたくない。だから高市がむきになって反論し、岸田が嘘を並べ立てているのである。

減税拒む自公政権

 生活必需品の値上がりが相次ぐ中、物価対策が参院選最大の争点になっている。野党各党は消費税率の引き下げや廃止をこぞって訴えているが、政権与党の自民党・公明党はかたくなに拒否している。

 自民党の茂木敏充幹事長は6月22日に行った街頭演説で「消費税を減税すると、社会保障財源を3割以上カットしないといけない」と主張し、有権者を脅した。公明党の山口那津男代表も「下げるなら、社会保障を支える代わりの財源はどうするんですか」と、野党を批判した(6/23)。

 茂木は同じ日の演説で、「防衛費は今5兆円。来年度には6兆円半ば。5年後にはGDP(国民総生産)比2%に持っていく」と、ぶちあげている。市民の税負担を減らすことには冷ややかだが、大軍拡には熱を上げる。これが自民党の正体である。追随するばかりの公明党も同罪だ。

 消費税に頼らなくても社会保障の財源は捻出できる。内部留保を増やし続ける大企業や、株取引で莫大な金融資産を増やしている富裕層に応分の負担を求めればいいのだ。大企業・富裕層優遇税制を是正すれば、43兆円(消費税率16%分)もの税収が生まれるとの試算もある(「不公平な税制をただす会」による)。

 いま世界ではコロナ危機や物価高騰を受け、多くの国が付加価値税(消費税)の減税に踏み切っている。日本だけが例外ではないはずだ。拒み続ける政府は代えればいい。参院選はそのチャンスである。 (M)

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