2022年07月15日 1731号

【ミリタリー・ウォッチング 核戦力で戦争は防げない 恥ずべき核禁締約国会議拒否】

 ロシアによるウクライナへの軍事侵略。しかも、プーチン大統領は核兵器の使用をちらつかせ、核兵器部隊を戦闘態勢に置くなどあからさまな核恫喝(どうかつ)を行う。“核戦争”を含む“世界大戦”のリスクすら高める危険な事態が生じている。

 こんな世界的な危機が進行する中、核兵器禁止条約の第1回締約国会議が6月21〜23日の3日間、オーストリアの首都ウィーンで開催され、政治宣言と「ウィーン行動計画」を採択した。

 宣言は、「核兵器を使用するとの威嚇やますます激しくなる核についての言説を警戒し、落胆している」と明記し、「いかなる形での核の威嚇も非難する」と強く表明した。また、「核抑止論」は「地球規模の破滅的な結果をもたらすリスクを前提としたもの」として「誤りだ」と明確に批判。核保有国や「核の傘」にある同盟国について「真剣な対応を取っていないどころか、核兵器をより重視している」と厳しく非難した。そのうえで、すべての国に条約参加を呼びかけた。

 会議には、非締約国からも、スウェーデン、スイス、フィンランドのほか、NATO(北大西洋条約機構)加盟国のドイツ、ノルウェー、オランダ、ベルギーを含む少なくとも33か国がオブザーバーとして参加した。

 他方、核禁条約に対し、米国などは「条約は(核廃絶の)目的を達成するのに、何の役にも立たない」(ブリンケン国務長官)と決めつけ、「NPT(核拡散防止条約)体制を弱体化させる」ものと敵視。「核抑止論」に固執する姿勢を全く変えようとはしない。

 核保有国に同調し、「唯一の戦争被爆国」でありながらオブザーバー参加すら拒否した日本政府は、「核抑止論」の恥ずべき信奉者の一員となってしまった。

 だが、今回のウクライナ戦争で明らかになったのは、核戦力によって戦争を防ぐことなど全くできなかったという事実だ。

NPT補完する核禁条約

 米軍備管理協会ダリル・キンボール会長は「安全保障戦略としての核抑止力の限界だ。例えば、プーチン氏は侵略への干渉を防ぐために米国などを(核で)脅した。しかし、米国や欧州は、ウクライナに大量の武器や人材、情報を提供した。ロシアの核兵器は、米欧によるウクライナ防衛の決断を抑止するのに、何の役にも立たなかったのだ」(6/18毎日)と断言する。

 8月1〜26日、ニューヨークでNPT再検討会議が開かれる。今回の締約国会議では、核禁条約と核拡散防止条約は補完し合う関係にあることが、あらためて確認された。8月のNPT再検討会議では、保有国の核軍縮への責任放棄をこれ以上許してはならない。

 締約国会議はそのことを真剣に訴えている。

 豆多 敏紀
 平和と生活をむすぶ会 
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