2022年07月22日 1732号

【MDS声明 安倍晋三元首相の殺害を糾弾する 命奪う暴力 根絶の道は平和をつくりだすことだ】

 7月8日、安倍晋三元首相が射殺された。まさに命を奪い言論を封殺する凶行であり、断固糾弾する。

 しかし、この殺人を批判することは、安倍元首相の進めてきた戦争、新自由主義路線をいささかも免罪するものとはならない。

 与野党とマスメディアは今回の殺害行為について、「民主主義の根幹を破壊する蛮行だ」と異口同音に述べたてている。だが、この国の民主主義の根幹を深部にいたるまで蝕(むしば)んできたのが安倍政権の一連の政策と態度であったことを、私たちは決して忘れてはならない。秘密保護法と共謀罪法を制定し、森友・加計(かけ)問題と桜を見る会をめぐる疑惑について国会で虚偽の答弁を繰り返してきたのは、安倍元首相にほかならなかった。彼の進めてきた数々の犯罪的行為は、その死後においても厳しく追及され続けなければならない。

 なぜこのような殺人が行われたかの直接的理由は、今後明らかになるであろう。しかし、暴力を誘発するような人の命を軽視する政策が自公政権によって進められている。ウクライナ戦争を利用し、軍事力強化、9条改憲が声高に主張されている。沖縄・南西諸島に自衛隊基地を建設強化し中国に対応するという方針は、戦争になれば逃げ場のない沖縄県民の命を軽視するものであり、沖縄戦を全く反省していないものである。

 また、格差拡大、社会保障切り捨ての中で市民の間に不安が広がっている。円安、物価高で市民の生活苦が増大しつつある。このような日本社会の矛盾そのものがこうした凶行の底流に存在する。

 自公政権は、今回の事件を口実にして警備体制を強化し、市民運動を抑圧し、改憲策動をさらに進めようとするであろう。戦前の日本は1932年の5・15事件、1936年の2・26事件という集団的テロ行為によりファシズムへと進んでいった。当時の権力はテロ実行者を罰したが、テロ行為の当事者たちが政策として主張した体制を作っていった。この再現を許してはならない。

 人命を奪う暴力の根本的解決は、憲法9条を守り、軍事力に依存しない社会にすることである。異常な格差拡大を許さず、市民の生活が守られていく社会に変えることである。これは自公政権、維新にできることではない。東アジアに平和を作り出すことで改憲路線を葬り去らなければならない。殺害行為を防ぐための確実な道は、平和をつくりだすことである。

  2022年7月9日
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