2022年07月22日 1732号

【政府の「最低賃金目標1000円」は論外 直ちに全国一律1500円へ 世界はすでに突入ずみ】

 日本の賃金が国際比較で異常な長期低落を示している理由を、労働生産性が低いからとする論調がある。これは低賃金を労働者各人の働き方のためとする資本の論理で間違っている。

正当な賃金が払われず

 大企業(資本金10億円以上)の財務の動向を見ると、2000年度から20年度にかけて、現預金は85・1%の増加(+41・6兆円)、経常利益は91・1%の増加(+17・7兆円)、内部留保は175・2%の増加(+154・1兆円)配当は483・4%の増加(+16・8兆円)。一方、人件費は0・4%の減少(▲0・2兆円)となっている。

 中小企業(資本金1千万円以上1億円未満)でも、同期間で、現預金は49・6%(+40・1兆円)、経常利益14・9%(+1・6兆円)、内部留保92・0%の(+73・4兆円)、配当216・6%(+1・6兆円)といずれも増加に対し、人件費は15・9%の減少(▲12・5兆円)である。

 現預金が増加する一方で人件費が減少しているのは、本来支払われるべき賃金が十分支払われていないからだ。利益を上げ配当や内部留保を増やしながら人件費を大幅に減らす。これでは労働者の購買力が低下し景気も回復しないのは当然だ。

コロナ禍で引き上げ

 この状況を転換するには全国一律最低賃金1500円をただちに実現し、低賃金労働者の賃金を全体的に底上げし、同一労働同一賃金の原則を雇用形態にかかわらず労働者全体にいきわたらせることである。

 コロナ禍の下で、世界各国の最低賃金は大きく引き上げられている。

 イギリスでは今年4月より成人(23歳以上)時給9・5ポンド(1555円)に。フランスでは5月より時給10・85ユーロ(1504円)に。ドイツでは7月から10・45ユーロ(1449円)、10月から12・0ユーロ(1664円)に引き上げられる。米カリフォルニア州では1月から時給15ドル(2041円)に、最大都市ロサンゼルスは7月から時給16・04ドル(2183円)となる。

 世界の最低賃金はすでに時給1500円時代に突入している。

 韓国でも、文在寅(ムンジェイン)政権下で18年に16・4%の引き上げ、19年も10・9%引き上げと二桁増が続き、22、23年はいずれも5%引き上げ。6年間で計48・7%の大幅な引き上げとなった。

 日本の最低賃金は、11年から21年の10年間で計26・7%しか上昇していない。この間に韓国の平均賃金額は日本を追い越したのだ。


声上げ審議会に迫る

 図表1は、最低賃金の全国加重平均の推移を示している。図表2は、厚生労働省「毎月勤労統計調査」からパート労働者の時給を算出し、その推移をとったものである。最低賃金の影響をうけやすい短時間労働者の賃金は最低賃金の上昇率をわずかに下回る比率で上昇している。





 21年は、コロナ禍で20年の最低賃金の引き上げ幅が+0・1%にとどまった影響もあり、パート時給は前年比+0・9%と小幅な伸びにとどまっている。このように最低賃金とパート労働者の時給は連動している。

 厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会は6月28日、22年度の最低賃金の目安を決める議論を始めた。審議会は、7月に引き上げの目安額をまとめる。これを受けて各地方審議会が都道府県ごとの具体的な引き上げ額を決める。政府は全国加重平均で時給1000円を目標としており、目標通りでも年率3%ほどの引き上げにすぎない。

 全国一律最低賃金時給1500円は、「健康で文化的な最低限度の生活」を営むために必要な最低生計費を実現し、パート労働者の賃金を時給2000円以上に押し上げる原動力となる。声を上げ、中央・地方最低賃金審議会に最低賃金1500円実現を迫ろう。
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