2022年07月22日 1732号

【2022参院選結果に示された民意を読む/求められる諦め≠ハぐう闘い】

 2022参院選は自民党、日本維新の会などが議席を伸ばし、立憲民主党や共産党が議席を減らした。投票率は前回(19年)を上回ったとはいえ、50%をわずかに超える程度だった。この選挙結果からどんな民意を読み取るべきか。自公長期政権が招いた悪政の数々をどこを足掛かりに転換していけばいいのか。


有権者が望むもの

 投票率は52・05%。約5千万人にのぼる有権者は投票しなかったことになる。

 「棄権者の意志」をどう読み取ればいいのか。それは「今のままでいい」という現状肯定とは明らかに違う意志だ。「投票してもどうせ何も変わらない」という諦めであり、それをどう捉えるかだ。現状への不満はありながら変革への道が見えないためと、受け止めなければならない。政権が変わるかもしれないという政治的高揚感が生まれれば、有権者が投票行動に向かうことは間違いないからだ。

 かつて自民党を下野させた09年衆院選の投票率は69・28%だった。何かが変わる。変えたいという期待感があふれていた。今回、全国平均より高い投票率となった選挙区を見ると、山形は61・9%。他は長野(57・7%)、山梨(56・2%)など、いわゆる「激戦区」で投票率が高まっていることを見ておかねばならない。

 一方、「投票にいった有権者の意志」はどうか。マスコミが出口調査をもとに開票と同時に当選確実の予測を示す「ゼロ打ち」。改選議席125(補欠選1議席含む)のうち、即座に100近い議席が当確となり、残りは27〜33議席と表示された。実に8割近くの議席は開票するまでもなく結果は明らかだった。「激戦区」は限られ、「変化」は起きなかった。しかし、「今のままでいい」との現状肯定とみることはできない。

政策批判が重要

 圧勝と報道される自民党だが、比例票で前回より55万票弱増えているに過ぎない。前々回から減少傾向にあった得票数をわずかながら持ち直したのは、安倍晋三元首相殺害事件が少なからぬ影響を与えたと思われる。全国を選挙応援で回った立憲民主党の蓮舫は「一気に空気が変わった。自民党だよね、という雰囲気になった」との感想を漏している(スポニチ7/11)。

 重点選挙区(東京、京都)で勝利できなかった維新。300万票近く増やしているが、全国的なイメージ戦略(元五輪選手、歌手、元東京都知事など)で票をかき集めたものでしかない。「改革」政党のイメージで一定の集票に成功したとすれば、それは維新への支持ではなく、現状変革への期待の表れと見るべきだ。

 有権者は政策よりもイメージで投票政党を選ぶ傾向がある(前号本紙8面)。「これ以上悪くなりたくない」とする現状維持思考が安定与党の自民党支持に向かわせ、「少しでも変われば」という期待は維新に幻惑されたということだ。両党が、貧困格差を生み出した新自由主義政策を推進し、憲法改悪から大軍拡の道をともに突き進んでいる張本人であることに、目は向いていないのだ。

 維新松井一郎代表は「自民党をピリッとさせ、公約を守らせるような野党が必要」と自ら自民補完勢力であることを隠さない。松井は「スケジュールを明確に」と改憲を迫る。岸田は「できるだけ早く」と語っている。年末までには国家安全保障戦略など戦争国家への宣言を公表する。

 すぐさま、一つ一つの政策との対決が問われてくる。

不可欠な統一候補

 投票によって政治を変えるには、つまり、自民党の議席を減らすには、市民と立憲野党の統一候補で闘うことが必要不可欠である。今回の選挙結果があらためて示した。改選数1の32選挙区で、野党は4勝にとどまった。山形(国民民主党)を除けば、青森、長野、沖縄の3選挙区に過ぎない。

 6年前の16年は11勝、3年前は10勝をあげている。惨敗の原因は野党統一が進まなかったことにある。16年は30選挙区で、19年はすべての選挙区で候補者が一本化された。今回、野党統一が成立した選挙区は11。新潟では野党統一候補となったものの、立民現職が共産党と距離を置き敗北。連合の野党分断で敗北した衆院選の教訓はいきなかった。

 野党統一の動きは、単に有権者に与党か野党かの選択肢を示すことにとどまらない大きな意味がある。「政治が変わるかもしれない」という期待感、高揚感を醸成する。そして何より、政党間の思惑、駆け引きを乗り越える市民運動の高まりを生む相乗効果がある。

 その点で、沖縄選挙区で野党統一候補(オール沖縄)の伊波洋一参院議員が議席を守った意味は大きい。

政権に負けない闘いを

 沖縄では辺野古新基地建設に反対する市民の運動が粘り強く続いている。自民党の候補者であっても建設推進を公約として掲げることは避けてきた。ところが今回、自民候補者は基地建設容認を公約に掲げ、9月に予定されている知事選候補とともに街頭宣伝を行った。安倍・菅政権下ではできなかった首相の現地入り支援まで強行した。

 伊波陣営は「岸田政権との闘い」と位置付けていた。辺野古新基地建設のみならず、沖縄を戦場とする軍拡路線との闘いが必要だったからだ。「沖縄を日米の駒にさせない。沖縄や日本が戦場となる安全保障などありえない」と伊波は当選後、決意を語っている。

 伊波の勝利は僅差だった。その差わずか2888票。投票率は50・6%。前回より高かったとはいえ全国平均以下にとどまった。「政府には勝てない」との諦め感が影響したのも事実だ。

 それだけに、この勝利は大きい。次の政治決戦である知事選に向け、有権者が望む平和で豊かな沖縄を実現する道は岸田政権との闘い以外にないことをより鮮明に示していかなければならない。政権には負けない力を見せつけなければならない。それは当然、沖縄だけの問題ではない。新基地建設も大軍拡も日本の明日を左右する問題なのだ。

 岸田政権は国会での「安定多数」をたよりにこれまで以上に強硬策に出るに違いない。岸田は衆議院解散をしない限り、3年後の参院選まで安定多数を維持できる。両院とも改憲勢力が3分の2を占めたままだ。この期間に憲法改悪発議を強行する可能性は高い。

 だからこそ全国からの闘いを抜きに、沖縄県民だけに選択を押しつけることはできない。

岸田は信任されてない

 選挙結果に表れた民意をどう読み取るべきか。新型コロナウイルス感染症やウクライナ戦争、物価高など社会的不安や困窮の解決策を政権が示せないにもかかわらず、「支持」される異常事態。それが「安定・安心感」を求めたものだとすれば、自公長期政権がもたらした罪悪を徹底して追及していく以外にない。

 マスコミが権力の支配に屈し、権力の監視、批判を行わない中でどう真実を伝えるか。「医療体制を拡充せよ」「戦争支援するな、即時停戦協議を」「消費税減税・廃止を」と具体的な政策を掲げた運動が、市民との対話を通じて一つ一つ明らかにしていく活動が重要だ。大阪カジノ住民投票運動はその実例を作った。市民は直接請求運動に触れ、真実を知った。

 有権者は決して、岸田政権を信任したわけではない。民主主義的社会主義の政策を具体化し、労働者の権利を守り、自治体や政府に実施を迫る労働運動や市民運動の強化により、現状を変えることができる実例を示す。それが勝利への展望だ。

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