2022年07月29日 1733号

【ミリタリーウォッチング/安保文書改定で進む秘密化/身近に感じる戦争と戦争犯罪】

 政府が改定を予定する安全・外交政策の長期指針「国家安全保障戦略」など安保関連3文書について、与党協議が10月下旬ごろ開始されるという(公明党北側一雄副代表、7/14毎日)。「12月中旬の閣議決定から逆算」としているが、政府は「台湾有事」口実の大軍拡に向けた「防衛力整備計画」の改定を来年度の予算編成をにらみ急いでいる。

 すでに「敵基地攻撃能力」について、「先制攻撃」批判を避けるため「反撃能力」と改称。先制攻撃用兵器のリスト化は進んでいる。

 これと並行して重大な事態が進行している。3文書の一つ「防衛計画の大綱」。それに代わる新たな文書を策定し、一部「秘密化」する案が浮上していると報道されたのだ(5/1共同)。

 文書が秘密保護法による「特定秘密」に指定されると、長期間非公開とされ、軍事戦略、軍備拡大の検証が制約されることになる。知らない間に戦争前夜という事態になりかねない。

ウクライナ戦争での事態

 その「戦争」が現実味を持っている。今年5月、憲法記念日の沖縄タイムス。伊勢崎賢治さん(東京外大教授)の寄稿文「9条 戦争犯罪と無縁か」に目が行った。普段、見過ごしている問題について考えさせられた。

 4月、ウクライナの首都キエフ近郊で、ロシア軍撤退直後に数百人の市民の遺体が発見されたとの報道があり、世界に衝撃を与えた。これと前後して、ウクライナ軍とおぼしき兵士が、拘束したロシア兵を射殺する映像が公開された。いずれも明確な「戦争犯罪」だ。

 ウクライナは、ロシアの侵略行為に対する「自衛権」行使とするが、応戦の一発から、ロシアと同様に戦争当事者として戦時国際法ジュネーブ条約を厳守する義務が生まれる。非戦闘員である市民への攻撃はもちろん、拘束した捕虜への虐待も厳禁とされ、それらを犯すことがいわゆる「戦争犯罪」なのである。

 伊勢崎さんは、戦争犯罪はまず当事国自らが国内法で裁き、不十分な場合国際法廷の必要性が議論されるという。ところが日本には軍による戦争犯罪を裁く軍事法制がない。現憲法下で「軍」は存在せず、殺傷行為には刑法適用としてきた。だが刑法は実行者に責任を負わせるが、戦争犯罪は指揮官の責任が問われなければならない。

戦争に進む首相の責任

 世界有数の軍事力を持ちながら、「首相を頂点とする『上官』の責任を問う法体系を持たないのは日本だけだ」と伊勢崎さんはいう。

 伊勢崎さんの論点とは異なるが、軍事情報を隠ぺいし、戦争への道を突き進む首相の責任をどう問うのか。戦争を身近に感じる日を機に考えなければならない問題だと思う。

藤田なぎ
平和と生活をむすぶ会
MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS