2022年07月29日 1733号

【ワツコ裁判が結審 会社の不当性を本人尋問で明らかに 試用期間中解雇を撤回させよう】

 7月8日、大阪地方裁判所で、なかまユニオンの女性組合員Aさんがワツコ株式会社を相手取り「地位確認」を求めた裁判で、口頭弁論(証人尋問)が行われ、結審となった。

暴力事件を隠蔽する会社

 Aさんは大学卒業後、2019年6月に通信機器等を販売するワツコ(株)に正社員として採用されたが、試用期間3か月で解雇された。

 それは、同年7月に会社の会議室で起こった暴力事件がきっかけだった。女性社員がいきなり立ち上がり、Aさんの右上腕部に両手を振り下ろしたことで、全治2か月の打撲傷を受け、治療のために休業。Aさんは「労災申請をしたい」と会社側に申し入れたところ、9月に試用期間満了で解雇されてしまったのだ。

 納得できないAさんが抗議文を送ったところ、社長から誹謗中傷めいた内容証明が届くようになった。会社は「コミュニケーションの一部」と暴行自体を認めず、「態度や言葉遣いが悪い」と人格攻撃し、挙句には「箸の使い方が悪い」とまで。しかし、本当の狙いは、Aさんの労災適用の申請をやめさせるためだった。

 Aさんはなかまユニオンに加入し団体交渉での解決を求めたが、会社は団交を打ち切り、逆に労働審判を申し立て。Aさんは20年8月に「地位確認」を求める応訴を提起した。21年2月には、「ワツコ(株)の試用期間不当解雇撤回の闘いを支援し、若者が人らしく働き続けられる社会をめざす会」が発足。闘いを支えてきた。

泣き寝入りはしない

 Aさんは「ワツコでは、これまでも精神的に追いつめられ、やめさせられた人がいると聞いた。これはもう自分だけの問題ではない」と闘う決意をした。試用期間=「お試し期間」の誤った認識で若者を使い捨て解雇する会社は許せないというのが、Aさんの思いだ。

 証人尋問を終えたAさんは支援者を前に「反対尋問があったけれども、記憶を頼りにがんばったと思います」と明るく報告。

 結審を宣した裁判所は一方で和解協議も進めていく流れだが、予断は許されない。Aさんの権利回復に向けた闘いは、大詰めを迎えている。

証言で頑張ったAさん 解雇に改めて怒り/ワツコ争議支援する会・石田隆子

 職場で暴行を受け、それを問題にすると、逆に加害者にされ、試用期間満了で解雇されたAさんは、納得がいかない、と裁判。地位確認訴訟に訴えました。

 証人尋問で、会社側2名とAさんの尋問がありました。会社の上司は「直接暴力行為を見ておらず、社員から聞き取りをした」とのことで、肝心のAさん本人からは何も聞かず、暴力事件がなかったかのように対応。その上、直接話した社長にも、診断書すら受け取ってもらえず、「逆に疑われて悲しかった」とAさん。

 「安全に働ける環境で職場復帰したい」という願いは聞き入れられず、会社は労災申請にも協力しませんでした(その後、労災認定された)。

 裁判と並行して行った団体交渉も、会社側は一方的に打ち切り。そのため労働委員会に申し立て、不当労働行為と認定され「誠実に団交に応じるように/“同じ行為を繰り返さない”との誓約書を組合に手交するように」と命じられました。

 しかし、会社は弁護士に任せ、他の書類と紛れ込ませ、机に置いただけでした。Aさんの弁護士が「手交の意味はわかりますか」と問うと、会社役員は「はい」と答えざるを得ませんでした。この件で会社は入札一か月停止処分を受けました。

 Aさんの弁護士は、会社側弁護士の誘導尋問については毅然と「異議あり」と指摘され、Aさんは最後までしっかりと証言されました。この傍聴で、解雇の理由が少しも正当なものではないことがますますはっきりし、Aさん本人の話を聞かず解雇したことに改めて怒りが湧きました。

 弁論後、Aさんの弁護士は「やるべきことは全部やれた。Aさんの主張は一貫していた」と報告、Aさんも「がんばったと思います」と発言されました。

 これからもみんなで支援していきます。



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