2022年07月29日 1733号

【未来への責任(353) 遺骨土砂「和解」 遺族の声を聞け】

 6月23日の沖縄戦慰霊の日にかかわってガマフヤー(沖縄戦遺骨収集ボランティア)が2日間行った戦没者救済ハンストに参加した。

 総務省所管の公害等調整委員会は沖縄県に対し、岸田首相が参加する沖縄県慰霊祭までに沖縄南部土砂の採掘行為に関する県と業者の和解案の受け入れ可否を県に求めてきた。その内容の主な項目は「工事の際に遺骨が発見された時は事業者は、その周辺5bの範囲で工事を2週間中止し、戦没者遺骨収集センターによる調査及び遺骨の収集を認める」というもの。この合意に基づき事業者は工事の再申請を行うことになる。

 22日朝から県との交渉に私も参加し発言した。「遺骨を発見したら…と言うが、あなたたちも知っていると思うが(砲撃を受けた)南部の土砂には粉々に砕けた遺骨が混じっている。その小さな骨はここにいう遺骨なのか?」と県の職員に質問してもだれも答えない。「骨だけでなく血や肉が腐り土に混じっている。その土地を掘って海に捨てるな。これが沖縄県民と沖縄戦のご遺族、全国のご遺族の気持ちだ。この和解案はそれと違う」と遺族の思いをぶつけた。

 具志堅隆松(ぐしけんたかまつ)さんは23日慰霊の日での岸田首相のあいさつを前に「戦没者に哀悼の誠をささげる前に、このような遺骨の混じる南部土砂を海に捨てる計画を立てたこと戦没者に謝罪すべき」とマスコミで伝えていたが、首相が行ったことは謝罪どころか23日までに土砂問題の合意を県に迫る強権的な姿勢だった。

 この合意は南部土砂を掘り始める合意に過ぎない。23日戦没者救済ハンストを取材する全国のマスコミと沖縄戦のご遺族に具志堅さんは呼びかけた。「この合意には瑕疵(かし)がある。それはご遺族の意見を聞いていないことだ。ご遺族にはこの問題に発言する権利がある」

 合意発表は1日延期され、24日早朝から県に遺族の公聴会を行うよう申し入れが行われた。県が実施しないならば、市民公聴会を開催し遺族の声を集める。『沖縄タイムス』26日社説は「本島南部の遺骨は粉々になって埋もれ専門家でも見つけることは難しい」「遺骨を含む土砂を新基地建設に使用することは戦争犠牲者や県民を冒涜(ぼうとく)するあり得ない判断だ」と県民の声を政府に突きつけた。

 8月5日は、衆議院第2議員会館1階多目的会議室で防衛省等との交渉も行われる(午後1時半〜4時半)。正念場だ。読者の皆さんも、ぜひ参加してほしい。

(戦没者遺骨を家族のもとへ連絡会 上田慶司 090-2062-5695)
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