2022年07月29日 1733号

【「統一教会」とズブズブの自民党/弁護士の警告を安倍は無視/祖父から続くカルトとの結託】

 安倍晋三元首相が銃撃されて死亡した事件をめぐり、「旧統一協会との関連を強調するのは犯罪者の思うつぼだ」という意見がある。しかし、多くの被害を出してきた教団と自民党及び安倍一派が癒着してきたのは紛れもない事実である。第二の犯罪を防ぐためにも、その闇に光を当てることが必要なのだ。

被害者続出の教団

 「母親が統一教会に入信し、多額の献金で家庭がめちゃくちゃになった。絶対成敗しないといけないと恨んでいた」「教団トップを狙おうとしたが難しく、教団と近い安倍元首相を殺そうと思った」

 殺人容疑で送検された容疑者の供述が連日メディアをにぎわせている。警備上の失態から目を逸らさせたい捜査当局が意図的にリークしている可能性はあるが、統一教会に対する深い恨みが犯行の引き金になったことは間違いない。

 統一教会(現・世界平和統一家庭連合)は、文鮮明(ムンソンミョン)教祖が1954年に韓国で設立した新興宗教で、日本では1964年に宗教法人の認証を受けた。以来、「霊感商法」「高額献金」「合同結婚式」など、様々なトラブルを起こしてきた。

 霊感商法は教団の資金獲得手段の一つで、「先祖の災いがある」などと称し、壷や数珠などを法外な値段で売りつけるもの。全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、87年〜2021年に連絡会などに寄せられた被害件数は約3万4500件、被害金額は計約1237億円に上るという。多額の献金をめぐっても、複数の民事訴訟で違法性を認める判決が相次いでいる。

 ところが「家庭を崩壊させる統一教会の活動について、行政も、政権を担う党の政治家も、何も手を打ってこなかった」(7/12連絡会声明)。なぜか。教団が自民党を中心とした右派政治家、特に安倍一派に取り入り、政界工作を行ってきたからである。

勝共連合と岸信介

 1968年、文鮮明は「国際勝共連合」なる政治組織を韓国で創設した。当時の朴正煕(パクチョンヒ)軍事独裁政権の庇護を得てのことである。同年、勝共連合は日本でも設立されたが、その後ろ盾になったのが右翼の大物である児玉誉士夫や笹川良一、そして安倍晋三の祖父にあたる岸信介(元首相)だった。

 勝共連合の主導により反共産主義を掲げる団体の世界大会が日本で開催された際(1970年9月)には、笹川良一が大会総裁、岸信介が大会推進委員長を務めた。74年5月に東京で行われた統一教会主催の「希望の日晩餐会」には、福田赳夫(後の首相)や安倍晋太郎(安倍晋三の父)ら40人もの自民党国会議員や財界要人が出席した。

 その後、統一教会の政界及び自民党への浸透は、選挙応援や議員秘書の送り込みなどを通じて深まっていった。1990年代初頭には衆参両院に約200人もの「勝共推進議員」がいたとされる。


安倍政権で再活発化

 90年代半ば以降、霊感商法や合同結婚式が社会問題化した影響で、大っぴらな政治活動はできなくなる。再び公然化したのは第2次安倍政権が発足してからだ。安倍一派の議員たちが統一教会系のイベントの呼びかけ人になったり、堂々と参加するようになった。

 全国霊感商法対策弁護士連絡会代表世話人の山口広弁護士は背景事情を次のように説明する。「統一教会と近いと分かった政治家は、安倍政権で大臣や副大臣、政務官に登用される傾向が顕著になった。大臣や政務官に登用されるためには、統一教会と仲良くし、協力関係にあった方が、早く出世できるという認識が(政治家の中に)浸透し始めたのです」

 実際、統一教会に近い議員は安倍政権で重用された。閣僚20人のうち10人が統一教会関連だったこともある(菅義偉、麻生太郎、加藤勝信、高市早苗、萩生田光一等々)。岸田政権でも警察組織を管理する立場の国家公安委員長(二之湯智)が統一教会が主導するイベントの呼びかけ人に名を連ねていた。

 こうした事態に危機感を感じた弁護士たちは、統一教会系のイベントに賛同したり、選挙支援を受けることのないように求める要望書を全国会議員に送った(2019年9月)。安倍元首相が教団関連団体の集会にビデオメッセージを送り現教祖に「敬意を表します」と述べたこと(2021年9月)に対しても、公開抗議文を出した。

 「反社会的団体である統一教会にエールを送るような行為が、被害者をどれだけ悲しませ絶望させるのか。新しい被害者がそれによって生み出されかねないということについて、政治家として配慮していただきたいと、くり返しお願いしてきた」(山口弁護士)。

 だが、この切実な訴えは黙殺された(安倍元首相に送った議員会館宛ての抗議文は受け取りを拒否された)。自民党や安倍一派にとっては、自分たちを応援してくれるカルト教団のほうが大切なのだろう。庶民の生活が壊されても無関心、社会的弱者にとことん冷たい連中の体質がここにもあらわれている。


民主主義を歪める

 自民党と宗教団体との結びつきは統一教会だけではない。神社本庁や靖国神社がそうだし、草の根改憲運動を展開する日本会議にしても宗教右翼の統一戦線である。政教分離を掲げてはいるが、実態は創価学会の政治部門である公明党と長年連立政権を組んでいることも忘れてはならない。

 自民党にしてみれば、コアな支持層、たとえば宗教票を固めることが、棄権が圧倒的に多い現状では選挙勝利の鉄則というわけだ。今回の事件を機に「民主主義への挑戦」というキーワードが飛び交っているが、日本の民主主義を歪めてきたのは誰なのか、見失ってはいけない。   (M)
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