2022年08月05日 1734号

【2022ZENKO反原発分科会 最高裁判決を逆手に運動 連帯を強化 課題が山積する福島原発事故】

 福島原発事故から12年余。政府は、事故などなかったかのように帰還政策=棄民と原発再稼働への動きを進めるが、放射能被ばく、水と土の汚染、住宅補償、損害賠償、コミュニティ崩壊など課題は山積している。

 7月24日に行われたZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)in大阪反原発分科会は、リモート参加も含め各地・各分野から原発を巡る情勢や運動の報告が相次ぎ、活発な討論が交わされた。

 議論が集中したのは、福島原発事故で国の責任を問う損害賠償集団訴訟の6月17日最高裁判決評価。判決は“想定外の津波が襲ったため防潮堤を造ったとしても事故は防げなかった。だから国に責任はない“と、国の規制権限の不行使を問わず、防護策は防潮堤にだけ限って水密化を避けた、国を免罪するものだった。

 かながわ訴訟原告団長・村田弘さんは「判決の中に三浦裁判官の反対意見を記さなければならないほど政治的な判断が働いた判決だった。直後の東電株主代表訴訟でさっそく最高裁判決を否定する判決が出たように、判例たり得ない」と指摘する。読売新聞・産経新聞が社説で「地方裁判所が最高裁判決に従わないのはけしからん」と、いら立ちを見せるほどだ。

 千葉訴訟の原告と家族を支援する会は「判決に一時はがっかりしたが、原告も『こんな内容なら覆せる』と元気だ」と報告。後続の京都訴訟、九州訴訟(メッセージ代読)からも原告から、第2判決=三浦意見書を今後の最高裁判決に押し上げていく決意が続いた。

被害者の人権守る

 避難者の緊急課題として、原発避難者住宅追い出しを許さない会代表・熊本美彌子さんは福島県による国家公務員宿舎からの避難者追い出しを批判。「県は2017年3月で住宅無償提供を打ち切った。非正規や無職など困窮世帯は民間賃貸住宅に引っ越せるはずはなく、代替措置もとらず強制退去の圧力を与え続けたのは人権侵害だ。助ける法律がないなら国際法に基づく対応を」と、支援を訴えた。

 “福島の今”を現地からリモートで報告したのは原発いらない福島の女たちの黒田節子さん。「復興庁はパンフ『放射線のホント』を広め、日本は世界で最も厳しいレベルの食品放射能基準とか、UNSCEAR(アンスケア:原子放射線の影響に関する国連科学委員会)を招いて放射能の健康影響はない、汚染水放出も問題ないと言わせるなど、うそを並べ現地の不安をそらそうとしてきた」と状況を報告。「そんな中でも6人の若者が甲状腺がん当事者として提訴してくれた」と声をつまらせ、支援を呼びかけた。

 子ども脱被ばく裁判を支える会・東日本は「一審判決は、肝心な被ばくの健康影響に触れず、行政の裁量問題にしてしまった。仙台高裁で審理を継続するため要請ハガキに協力を」と、重要局面について報告した。

事故は起こさせない

 東電刑事裁判控訴審は来年1月判決予定。東電の刑事責任を追及する会は「万が一にも起こしてはならない原発事故だから、事業者には“高度の注意義務”が必要。あらゆる事態を想定し規制権限を行使しなかった責任は重い」と指摘する。

 国益ありき、安全無視の最高裁判決がまかり通れば、再び原発事故も起こりかねない。老朽原発再稼働反対の闘いを進めるZENKO関電前プロジェクトは「想定外、責任は取らないとまで言われたのに、立地自治体は原発を推進するか。避難計画だって無意味になるだろうと迫りたい」と、最高裁判決を逆手に取った運動の強化を強調した。

 参加者は、お互いの持ち場での運動をベースに、情勢の共有、共通した闘いの連帯を話し合った。



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