2022年08月12・19日 1735号

【「安倍川柳」が大炎上/右派の難癖に降参「朝日」】

 朝日新聞の川柳欄が安倍応援団に噛みつかれ炎上している。批判の標的にされたのは、安倍元首相の銃撃事件や国葬問題を扱った読者の川柳である。特に、選ばれた7本すべてが「安倍関連」の句だった7月16日の回が問題視された。

 どんな句か。「銃弾が全て闇へと葬るか」「ああ怖い こうして歴史は作られる」「利用され迷惑してる『民主主義』」「死してなお税金使う野辺送り」等々。個人的には「忖度はどこまで続く あの世まで」が秀逸だと思う。

 川柳らしい笑いを込めた社会風刺だが、安倍応援団は「亡くなった安倍氏を貶めている」と大激怒。夕刊フジに至っては掲載の経緯などを聞く質問状を朝日新聞社に送り付けた。

 すると「朝日」は「ご指摘やご批判は重く、真摯に受け止めています」と早々に降参。「朝日新聞社はこれまでの紙面とデジタルの記事で、凶弾に倒れた安倍元首相の死を悼む気持ちをお伝えして参りました」と弁明した。

 右派のバッシングに媚びへつらう態度は情けない限である。「表現の自由」を守り抜く気概はみじんもない。そもそも哀悼を前面に打ち出した紙面構成自体が間違っている。それは弔意の同調圧力で政府批判を封じ込めようとする岸田政権の手口と同じことだ。

 「朝日」の腰ぬけぶりは川柳欄だけではない。社会学者の宮台真司・東京都立大教授が銃撃事件について語ったインタビュー記事で、自民党と統一教会の関係に関する部分を編集部の判断で削除したのである。

 問題の記事は7月19日付朝刊に掲載された。宮台教授によると、担当記者は記述を残そうと奮闘したそうだが、結局インタビューの「重要なポイント」が削除されてしまったという。まさに「忖度はどこまで続く あの世まで」を地で行く行為といえる。

   *  *  *

 唐突だが、筆者も「安倍川柳(アベノセンリュウ)」に挑戦してみた。まずは「同じ未来 見ていた人は呼ばないの」。ロシアのプーチン大統領を招いて停戦を話し合うなら、「弔問外交」とやらの意義はあると言えるのだが…。

 続いて「粗供養はアベノマスクでどうでしょう」。大量に余っているのだから、「国葬」の際に配ってしまえばいいんじゃないか。故人を象徴するアイテムだしね。新型コロナウイルス対策として、参列者にアベノマスクの着用を促してみるのもいいだろう。

 「感染防止にならず、危険だ」って。もちろんそうなんだけど、そんな愚行が安倍首相最後の目玉政策だったのである。(O)

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