2022年08月12・19日 1735号

【大阪府議会 カジノ住民投票条例案を否決/抗議の怒号渦巻く/反対から中止へ新たに決意/住民投票をもとめる会抗議声明/民意にそっぽ 維新・吉村】

 7月29日午後7時、大阪府議会は府民の声に全く背を向け、カジノ住民投票条例案を否決した。審議はわずか半日。委員会付託すら拒否し、維新、公明、自民の代表質問のみの非民主的採決強行に傍聴席から「数の横暴」「維新は終りだ」「反対した議員、忘れないぞ」と怒号が渦巻いた。

 だが、市民のエネルギーはさらに増大し噴出する。住民投票をもとめる会は、直後に記者会見で抗議声明を発し、「反対から中止へ!運動を次なるステージへと継承・発展させ、カジノ誘致計画を中止に追い込む」と決意を表明した。

200人が座り込む

 この日、府庁前には朝から「住民投票実現を」の声があふれた。会の呼びかけに72市区町村から200人が座り込んだ。大垣さなゑ共同代表が「45年ぶりの直接請求というすごいことなのに、議会がどうなるか今もわからない。ちゃんとした審議に。いいかげんにはさせない」と憤る。

 市民が続く。「住民投票は究極の民主主義と言ったのは維新。当たり前のことを議員は受けとめよ」「何を考えているんや、吉村知事/住民投票やらんかい/やるまで最後まで頑張るー」「45年前、1977年に救急医療条例の直接請求も経験した。今回は市民が前面の画期的運動。たとえ非民主的採決があっても運動は終わらない」。依存症だった親からの体験を涙ながらに語り「ニュースにならない虐待がいっぱいある。虐待が増えたら知事は責任をとれるのか」の発言も。

 「条例を制定せよ」とコールをぶつけ、傍聴へ。46席を地域の代表などを優先的に融通しあい入場した。

議会揺さぶった21万筆

 本会議では6人計30分の不当な制約の中、意見陳述。

 会の山川よしやす事務局長が「吉村知事、やっと会えましたね」と切り出す。知事は顔をそむけ目は泳ぎ動揺を隠そうと構える。「(21万筆の写真を示し)この署名を見たか。1万人超の受任者が市井(しせい)で数百万回の対話で集めたもの。知事は手続きを着実に行ったと言うが、公聴会は9割が反対、説明会参加は府民の0・0125%で、説明責任を果たしたと言えるのか。民意に向きあわなければ880万府民の代表―知事として失格だ。軟弱地盤夢洲(ゆめしま)への公費投入は2076年まで子どもたちに負担を残す。議会・知事には民意の反映が問われている」

 豊中市の井上眞理子さんは「7月7日に豊中市議会で条例制定を求める意見書が採択された。署名は府民の心、思いの表れ。住民合意はなく公共の場での充分な議論、熟議を求める」。父が依存症だった四條畷(しじょうなわて)市の山本啓一郎さんは「カジノは必ず依存症を生み、暗い青春となる子どもをつくり出す。どこで依存症対策の手が届くのか。子どもたちを不幸にする政策はあり得ない」、高槻市の加納忠さんは「受任者は“行政が大阪をバクチの街にしていいのか”と問いかけて署名を集めてきた。是非は府民が決めるべき」と迫った。堺市の山口美和子さんも「依存症患者の家族なので、親が働くべき時に働けなかった現実を知っている。カジノは府民に落とし穴をつくる」、枚方(ひらかた)市の高松昌子さんは「おかしいことはおかしい≠ニ受任者は工夫をこらし62日間も署名を集めてきた」と陳述した。

 21万筆の力は府議会を揺り動かした。自民党は直前に住民投票賛成を決め、修正案を提案。維新・公明の翼賛質問は、かえって道理のなさをあらわにした。条例案否決後、「#民意無視の大阪カジノ強行に抗議します」のツイッターデモは1日で9万ツイートに達した。カジノ撤回、維新府政を揺さぶり変えていく市民の運動が新たに始まる。



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