2022年08月26日 1736号

【9・11沖縄知事・地方選勝利の鍵/岸田政権との闘いを全国から】

 施政権返還50年の沖縄。8月末から10月初めにかけ、30の市町村で選挙が行われる。中でも9月11日は24市町村議会議員・4市町村首長選と同時に県知事選の投開票日だ。参院選で勝利できなかった政権・与党は全力で票の囲い込みをしてくるだろう。

 知事選の結果は沖縄だけでなく日本の進む方向を決める重要な意味を持つ。

保守層の切り崩し

 選挙争点は明確だ。米軍辺野古新基地建設を認めるのかどうかに尽きる。今回、政権与党が推す候補者が初めて「辺野古容認」の立場を明らかにした。振り返れば、辺野古の埋め立てを承認した仲井眞弘多知事(当時)も県内移設反対の公約を掲げ、当選した。2013年12月、安倍晋三首相と会談後、容認に転換したのだった。

 その後、翁長雄志、玉城デニーと続く知事が埋め立て承認の「取り消し」、「撤回」、「設計変更不承認」と建設工事を阻止しようと闘ってきた。これを支えたのは、保守層も含めた「米軍普天間基地の辺野古移設に反対する保守・革新の共同体」(オール沖縄)の結成だった。8年前の翁長選挙で36万票、4年前の玉城は39万票を獲得した。翁長が掲げた「誇りある豊さ」は政府の圧力には屈しない思いが込められていた。「イデオロギーよりアイデンティティ」は保革対立を乗り越えるメッセージだった。県民はこれを圧倒的に支持した。

 政府は、辺野古の争点化を避けながら、このオール沖縄の切り崩しにかかった。建設業や観光業のグループ企業が抜けた。市町村長選挙でオール沖縄候補が勝てなくなった。参院選でもオール沖縄の伊波洋一候補は勝利したものの、自治体単位で見れば13勝28敗の結果だった。知事選は地方選とともに闘われる。政府は「オール沖縄」の足元から、保守層の分断・取り込みをはかろうとしている。

「カネ」と「法の壁」

 だが県民の意志は明確だ。基地はいらない。この民意を表明させないように政府は圧力を加えている。

 一つには「カネ」だ。仲井眞が基地容認に転じたのは「沖縄振興予算」の大幅増額との引き換えだった。「振興予算」と名付けられているが、基本は他の自治体と同様のルールで配分される地方交付税交付金・国庫支出金だ。沖縄の場合、内閣府の沖縄担当部局がとりまとめ「沖縄振興予算」と呼んでいるにすぎない。

 ただ、民主党政権下で創設された「特別推進交付金」は首相の裁量で決まる。政権に返り咲いた安倍が仲井眞に沖縄振興予算を21年度まで3000億円台確保を保証し、仲井眞が「よい正月が迎えられる」と応じたのが象徴している。実際22年度の当初予算は昨年度から326億円削減され、2684億円と3000億円を切った。

 「カネ」の力とともに悪用しているのが法制度だ。 行政不服審査法、地方自治法を捻じ曲げ、埋め立ての適否を審査する知事権限を事実上、奪った。国がどんな違法工事を行っても知事は是正指導できない。裁判官にまで、「忖度判決」を書かせている。沖縄県は8月12日、「国の関与は不当」と福岡高裁那覇支部に提訴したが、これを「また法廷闘争」と否定的に報道するメディアまである。

 しかし、批判されるべきは県ではない。法を悪用し、司法に圧力をかけている政府であり、良心に従えない司法のふがいなさだ。

 「カネ」と「法の壁」が沖縄県民を「諦め」に誘導する。政府に歯向かえば予算が減る―こんなことを許してはいけない。全国すべての自治体が力を合わせてはね返さなければならない。国と自治体は対等。まして選挙は、民意が正しく表明できる環境が必要だ。「誇りある豊かさ」をめざす沖縄県民に「諦め」を押し付けてはならない。

再び戦場にするな

 ウクライナ戦争、「台湾有事」を口実に大軍拡が狙われている。中国の軍事侵攻に対する日米共同作戦。沖縄・南西諸島(琉球弧)を戦場とするシナリオが現実味を帯びてきた。岸田政権はアジア版NATOの盟主に名乗りを上げた。キーとなるのが辺野古新基地の建設だ。

 だが、基地はできない。軟弱地盤が見つかってから5年。日本の土木技術の司令塔ともいうべき国土交通省が全力で検討しても、適切な工法が見いだせない。政府・沖縄防衛局は県の指摘に答えられないまま、でたらめな変更設計書を提出せざるを得なかった。

 政府の言いなりになる知事が誕生すれば、安全性に欠け、環境破壊を引き起こす埋め立て工事が一気に進んでしまう。遺骨混じり土砂が基地の底に投棄される。全国から岸田政権に抗議の声をあげること、これが沖縄県民を励まし、民意を正当に表明できる環境をつくる。「戦争が当たり前の世界」にしてはならない。2度と戦争を起こさせない決意を新たにするときだ。

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