2022年08月26日 1736号

【未来への責任(355) 韓国人戦没者遺骨の鑑定を】

 8月5日に戦没者遺骨問題でガマフヤーと国との意見交換会が開かれた。

 第1部は厚労省・外務省と遺骨を家族に帰すためのDNA鑑定について、とくに今回は沖縄戦遺族・韓国人遺族のことを意見交換した。第2部は沖縄南部の遺骨土砂の辺野古基地建設への使用について防衛省と話し合った。

 第1部の韓国人遺骨問題について報告する。タラワ島の遺骨で1名の韓国人遺族、2名の日本人遺族が確認された。タラワ島戦没者の4人に1人が韓国朝鮮人で、韓国がすべてを日本人として扱うことに異議を申し立て、米国と韓国が協定を結んだ結果、日米韓の遺骨の共同鑑定が行われた。しかし韓国への1体の遺骨返還に厚生労働省は全く知らぬ顔をしてきた。今回外務省に日本は返還に関与すべきではないかと追及した。外務省はこの戦没者の死は、韓国を植民地支配した結果であり日本が関係のないことはないと認めた。

 タラワ島の残る150体の遺骨については、米国から故郷に帰すための安定同位体検査を始めたことを厚労省は認めた。しかし、日本・韓国のどこで育ったかを確認するストロンチウムの検査について、準備段階の作業中として、その進行を止めていることも明らかになった。この島の遺骨返還にしっかり取り組むことは、先行モデルとなり、その成功は日韓遺族の大きな利益となると思う。

 沖縄戦での韓国人遺族170名の遺骨との照合について厚労省は昨年、「韓国人を差別するつもりはないが返還条件が合意できていないので照合を始められない」と回答した。「返還条件」について外務省は2010年当時の外務大臣が「過去の一時期、植民地支配によって韓国国民に大きな損害と苦痛を与え。痛切な反省と心からのおわび」を表明したことを認めたが、「12年間にいろいろあったので、謝罪が可能・不可能と、ここですぐに言えない」とした。謝罪をしたくないからDNA鑑定できないなどとんでもないことである。

 リモートで韓国から参加していた沖縄戦犠牲者コンスチョンさんの遺族は「静かに話をするつもりだったが、外務省や厚労省の話を聞いていてそうはいかなくなった。遺族の遺骨を帰してほしいと言う声には無条件で応えるべきだ」と怒りをあらわにした。外務省は「遺骨を早期に返還することはとても重要だと考えている」「日本政府は、人道的な観点から早期返還を実現する用意がある。韓国と粘り強く協議を継続していきたい」と答えざるを得なかった。

 今回、韓国人遺骨返還で何が問題なのかを明確に追及した。政府は「植民地支配の反省」を本当に考えるなら、遺族の謝罪要求に応え無条件に鑑定を始めるべきである。

(戦没者遺骨を家族のもとへ連絡会 上田慶司)

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