2022年08月26日 1736号

【「遺骨はごみではない」遺族の声を無視 “人道にもとる”防衛省・厚労省】

 沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さんは8月5日、衆院第2議員会館で「ガマフヤーと国との意見交換会」を行い、沖縄戦戦没者遺族や沖縄選出の国会議員とともに防衛省と厚生労働省などに対して遺族らの思いを突きつけた。

 防衛省には、「戦没者の遺骨や血が混じった南部土砂を辺野古新基地建設の埋め立てに使うな」と強い抗議を表明。具志堅さんたちは計画撤回を求めたが、防衛省は「設計変更承認後の埋め立てに使用する土砂の調達先は決まっていない」と繰り返し同じ文面の回答を読み上げるだけで、会話にさえならない。

 日本共産党の赤嶺政賢衆院議員は、沖縄戦の惨状を説明し、道義的見地から撤回を要求したが、「沖縄戦の被害は承知している」と口にはしても「土砂の調達先は検討中」と他人事のようにまた同じ回答を淡々と述べるだけだ。参加者一同は怒りを抑えるのに精いっぱいだ。

 たまりかねて遺族のひとりが立ち上がり、祖父の遺影を防衛省担当者の目の前に掲げた。「祖父の遺骨はごみではない。遺骨は国のものではなく戦没者とその遺族のもの」と切実に訴えた。防衛省はこのような遺族の声をまったく聞かない。「土砂使用において戦没者遺族の意見を聞く予定はない」とまで断言した。具志堅さんは「戦没者遺族の声を全国から集める。防衛省が撤回するまで世界中に言い続ける」と固く決意した。

 沖縄と中部太平洋タラワ島での戦闘による韓国人戦没者遺骨の返還も進展していない。参加者から「返還条件に『謝罪』が必要だからか」の質問に、「日韓関係は厳しい状況」と日本の植民地支配についての謝罪を行う気配も示さない。オンラインで参加した韓国人遺族は「怒りを覚える」と激しい言葉で抗議した。

 厚労省は、遺骨のDNA鑑定結果の遺族への報告を怠っている。「身元判明に至らずとも、経過報告は定期的にしてほしい」と遺族は訴えた。厚労省の応対も、防衛省と同じく人道にもとる=i6面に関連投稿)。

埋め立てに使うな/具志堅さんがハンスト

 具志堅さんは8月14日、「新時代アジアピースアカデミー」主催の国連報告会で、7月の「先住民族の権利に関する専門家機構」に参加・発言した経験に基づいて「アジアの先住民族が抱える問題を共有し、国連に影響力を持てるようにする」ネットワークづくりの必要性を訴えた後、靖国神社前でハンガーストライキ。15日夕まで貫徹し、「『遺骨土砂を海に捨ててよいか』を問うシール投票に693対27と圧倒的な反対の民意が示された。これからも自信をもって戦没者と遺族に手を差し伸べていこう」と決意を新たにした。

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