2022年09月02日 1737号

【JR東日本も赤字路線公表 ローカル線全面切り捨て 阻止する全国の闘いを】

 7月28日、JR東日本は赤字線区として35線区66区間を公表した。JR西日本は今年4月に17路線30区間の赤字をすでに公表、JR九州・四国も公表している。JR北海道は2016年にいち早く「自社単独では維持困難」な10路線13線区を公表、地元との間で協議を終えつつある。JR東海以外の5社がすべて赤字線の整理に向けた地元との協議入りを表明したことになる。


北海道方式を全国へ

 コロナ禍により乗客が大幅に減少した2020年度決算では、東日本・東海・西日本3社をはじめJR6社すべてが赤字となった。だが2019年度までは前の3社とも一度も赤字決算の年はない。3大都市圏を抱える3社は内部補助(注1)によりローカル線を維持してきた。各社は「テレワークの定着や外国人観光客の長引く入国制限により、今後、利用客数がコロナ禍前に戻ることはない」との予測を赤字線公表の根拠にしている。だが、コロナ第6波が山を越えた今年春以降はテレワークを出社に戻す動きも加速している。明らかに性急に過ぎる赤字線公表は、ローカル線廃止を誘導する意図的なものだ。

 JR東日本の赤字線公表に先立つ7月25日には、国土交通省「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」が提言をとりまとめ公表した。この提言では、輸送密度(注2)が少ないことのみで路線の存廃を決定すべきではないとする一方、輸送密度千人未満の路線は国が主導する形でJRと地元との協議会を設置し、存廃について3年以内に結論を出すよう求める。矛盾に満ちた内容だ。

 JR北海道では、輸送密度200人を下回る5区間が廃止対象となる一方、2千人を上回る路線は地元の協力を条件に存続するとの基準が示された。今回の提言はJR北海道方式廃線の「全国展開」だ。協議の結論を3年以内としたのも、北海道で維持困難路線公表後6年近く経つ今なお5区間が決着していないことに対する焦りを反映している。


今後の闘いの材料も

 提言は、一方で(1)貨物輸送や観光輸送上重要(2)鉄道廃止が交通渋滞につながる可能性があるなど「公共政策的意義」を持つ路線に存続があり得ることを初めて示唆した。住民・自治体による闘いで国が一定の譲歩を強いられたことも提言からうかがえる。公共交通を守る闘いを北海道から全国に拡げなければならない。

(注1)儲かる路線で儲からない路線を支えること
(注2)1日1キロメートル当たり輸送人員

2022ZENKO 新自由主義と決別し地方公共交通再生へ

 2022ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)「JR・リニア問題」分科会(7/24)は、以下の決議を採択している。

 (1)リニア・整備新幹線建設を止め、捻出した予算を公共サービス・ネットワークとしての地方公共交通維持再建に振り向けさせよう。そのための財源確保と関与を国に求めよう。北海道新幹線阻止のため関係機関要請に取り組もう。(2)問題だらけの大深度地下法の廃止を勝ち取ろう。(3)全国の貨物輸送を守るため、鉄道貨物輸送への補助金の拡充を求めよう。モーダルシフトを推進し、環境に優しい物流を実現しよう。(4)JRの安全を監視し、利用者本位のサービスを取り戻そう。(5)利用者・市民が決定権を持つ民主的な公共交通を確立するため新自由主義と決別し、鉄道再国有化を実現しよう。(6)知床遊覧船事故で船舶の安全規制のずさんさが明らかになった。国交省の責任を追及し、安全規制強化を勝ち取るため、中央要請行動等に取り組もう。
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