2022年09月09日 1738号

【防衛省 中国狙うミサイル1000発調達へ/沖縄を戦場にする概算要求糾弾】

 防衛省が2023年度の概算要求を明かにした。報道によれば、要求額は過去最高の5兆5947億円。この他に、金額を示さない「事項要求」を100項目以上も積み上げている。「5年以内に抜本的に強化する」政府方針に沿い、来年度予算案には6兆円台半ばの軍事予算が計上されると言われる。軍事大国化に一層拍車をかけるつもりだ。

「抜本的強化」とは

 「抜本的強化」とは何を強化するのか。防衛省は強化すべき7分野をあげた。まずは「スタンド・オフ防衛能力」。敵の射程圏外から攻撃する能力のことだ。

 具体的には陸上自衛隊の「12式地対艦ミサイル」改良型を量産するという。すでにミサイルの射程距離200`bを1000〜1500`bにする「改良」が三菱重工のもとで進んでいる。沖縄・南西諸島(琉球弧)から中国大陸・朝鮮半島に充分届く距離だ。

 長射程化の他レーダー捕捉を回避するステルス性能を高め、衛星から送られてくる敵艦の位置データを常に更新する機能をもつ。艦船だけでなく、対地攻撃能力も備える。26年からの量産計画を前倒しし、1000発を調達する。

 防衛省はこの「12式の改良」とは別に、射程2000`b(東京・北京間の距離に匹敵)の新型ミサイルの開発研究を川崎重工に委託している(日経ビジネス21年8月18日)。ミサイル長距離化に余念がない。

 ミサイル量産の次にあげられたのは「総合ミサイル防空能力」。「時代遅れ」と自認するミサイル防衛システムを極超音速滑空兵器に対応できるようイージス・システム搭載艦の能力を高める。その他、ドローン攻撃機などの兵器調達の他「宇宙・サイバー・電磁波」領域での戦闘をになう「サイバー企画課」の新設など組織体制の強化にも言及している。

 さらに、軍需産業がサイバーセキュリティー強化の設備投資ができるよう法人税の優遇措置まで要求している。「経済安保」の掛け声は軍需産業育成にむけた動きを公然化させている。

日米共同軍事作戦

 陸自の「12式地対艦ミサイル」はどう使われるのか。類似の兵器がウクライナ戦争で「威力」を発揮しているという。米国が供与した高機動ロケット砲システム「ハイマース」だ。使われているロケット弾は射程80`b前後だが、GPSを使った誘導で命中率が高い。ロシア軍の弾薬庫などをピンポイントで破壊しているという。

 ロシア軍の長距離砲(榴弾砲、射程40`b程度)では届かない位置(スタンド・オフ)から攻撃し、発射後は高速で移動できるため、反撃を受けにくい。「ウクライナ軍が劣勢だった状況を大転換することになったゲームチェンジャーの1つだ」(元自衛官渡部悦和7/31NHK)と、その威力が強調されている。

 だが、兵器の性能などは相対的なものだ。敵の攻撃圏外「スタンド・オフ」は、常に維持できるとは限らない。ロシア軍はドローンを使い攻撃範囲を広げ、「圏内」に捉えている。射程を伸ばすことはそれだけ戦闘域を拡大することなのだ。

 つまり、12式ミサイルの射程を1500`bに伸ばそうが、中国からは2000`b前後の弾道ミサイル(東風21型)が沖縄を含む日本の全域を捉えている。「スタンド・オフ」など存在しない。

 むしろ「21式地対艦ミサイル」は「ハイマース」とともに、「中国侵攻」に対する日米共同軍事作戦の中軸兵器として、中国艦船の足止め作戦に位置づけられているのだ。

 米海兵隊は陸自のミサイル部隊のある奄美大島や宮古島、石垣島を含む約40か所を転戦。小規模部隊が分散して戦う海兵隊の「遠征前方基地作戦」(EABO)は、中国の攻撃圏外から攻撃する「エアシ―バトル」に代わるものとして登場してきた。陸自の12式地対艦ミサイルは、海兵隊の後方支援と位置付けられている。ミサイル長距離化は「艦船の足止め」ではなく、大陸奥の司令部を狙うものだ。中国との軍事緊張は高まるばかりだ。

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 この作戦計画が報道された昨年12月、沖縄県民は不安と怒りに包まれた。玉城デニー知事は作戦の全容開示とともに沖縄を二度と戦場にしないよう要請しているが、防衛省は素知らぬ顔。

 現在沖縄は県知事選の真っただ中。辺野古新基地建設とともに「台湾有事」を煽り軍拡に突き進む岸田政権に対し、玉城デニー知事の再選を勝ち取り、平和外交こそ政府が行うべき政策であることをわからせなければならない。軍拡反対、辺野古反対、軍事緊張を煽るなと全国から声をあげよう。



  
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