2022年09月09日 1738号

【ミリタリーウォッチング/ウクライナに見る沖縄・南西諸島の住民保護/「移動すべきは基地」だ】

 今日の戦争では、いったん軍同士による武力衝突となれば、非戦闘員である住民の保護はほとんど不可能になる。そこで、住民の犠牲をできるだけ防ぐ目的で、ジュネーブ条約等様々な国際法、人道法で「軍民分離」を原則とする規定が確立している。

 だが、ウクライナ戦争でも明らかなように、この「軍民分離」原則を無視した戦争犯罪が多発している。ロシア軍による無差別爆撃をはじめ膨大な戦争犯罪事例が報じられる一方で、侵略された側のウクライナ軍による戦争犯罪も報告されている。

 アムネスティの調査報告は、今年4〜7月に調査担当者が東部ハリコフ、ドンバス(ドネツク、ルガンスク両州一帯)、南部ミコライウの各地域に滞在して調べた結果として、ウクライナ軍が19の町や村で、人口の多い住宅地内から攻撃したり、休校中の学校など民間の建物に拠点を置いたりしている証拠を得たとしている。「(カラマード同事務局長は)『民間人を危険にさらし、戦争法規に違反する』と批判した」(8/10毎日)との報道も見られた。

 今、何よりも優先すべきは住民保護である。

不可能な「避難計画」

 東アジアでは、ペロシ米下院議長の台湾訪問強行が中国と米国の間に軍事的緊張を高めている。

 沖縄・南西諸島のミサイル基地建設を軸にした自衛隊大増強計画は、中国軍と自衛隊・米軍のミサイルが飛び交う激しい戦闘を想定した戦争計画である。政府は、中国の軍備増強に対抗する軍備が必要として軍事力拡大を急ぐが、非戦闘員である島民などの安全や保護に関してはほとんど明らかにしていない。

 沖縄県では、2004年施行の国民保護法に基づく避難計画のひな型となる「避難実施要領のパターン」を宮古島、石垣など7市町が策定している。琉球新報(6/21社説)によれば、石垣市の場合、住民を避難させるための航空機は1機で150人運ぶとして延べ435機が必要であり、宮古島市の場合でも、航空機で381機、500人を運べるフェリーでは114隻が必要と算出されている。誰が見ても不可能な数字であることは明らかだ。

 自衛隊制服組幹部は「自衛隊に住民を避難させる余力はないだろう。自治体にやってもらうしかない」と発言している。住民の安全、保護など眼中にないこのような無責任な自衛隊ミサイル基地建設計画は、ただちに中止すべきだ。沖縄戦の最大の教訓は「軍隊は住民を守らない」「軍隊は住民に銃を向ける」だ。「移動すべきは基地」(「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」6/19講演会)。これこそがもっとも現実的な住民の安全保障に他ならない。

 豆多 敏紀
 平和と生活をむすぶ会 
MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS