2022年09月16日 1739号

【全国際自動車労働組合 最高裁勝訴後の取り組み/執行委員会で議論を深め、組合員を拡大/労働者の生活と権利を守る/首都圏なかまユニオン 石川正志】

 タクシー大手4社の一つ、国際自動車を相手に残業代裁判を闘い、一昨年3月、最高裁勝利判決をかちとった全国際自動車労働組合(国際全労)。その後も職場を基礎に運動を強化し、組合員を増やしている。国際全労が所属する首都圏なかまユニオンの石川正志さんから報告が寄せられた。

 国際自動車は従業員約6700人。その約95%を会社べったりの国際労働組合が組織しています。国際全労は、労働者の要求をまじめに取り上げ、生活と権利を守るために伊藤博・前委員長が中心になって作った労働組合です。首都圏なかまユニオンに加盟し、8年にわたって不払い残業代請求裁判を闘いました。

 羽田営業所の14人が始めた裁判でしたが、全営業所に組合員を広げ、退職者も含めて約200人が原告に。第1次訴訟は地裁・高裁で勝利したものの、その後は敗北が続き、最高裁は高裁へ差し戻し。高裁で敗訴したため最高裁に上告し、ここで画期的な勝利判決をかちとりました。

 また、国際自動車は組合ごとに労働者供給契約を結んで定年後も継続雇用していますが、国際全労とは契約せず、同組合員は定年後、国際自動車で働けませんでした。これは不当労働行為だと労働委員会に訴え、都労委・中労委で勝利。行政訴訟でも国際全労が全面勝利し、定年後も働けることになりました。

 最高裁判決に基づき再び高裁で審理中の昨年2月、和解が実現し、不払い残業代の全額と遅延損害金の半額、計約4億円を国際自動車に支払わせました。

伊藤前委員長の遺志

 和解成立を見届け、がんで他界した伊藤さん。会社と同等、それ以上の関係を作ってきた人でした。営業所で問題が発生したら、そこに出向く。すると所長が挨拶に来て、「何かありました?」と聞く。そして交渉に入り、伊藤さんが抗議して解決するのです。

 伊藤さんの遺志を引き継ぎ、新しい執行委員会が発足しました。

 最近の団体交渉では、パワハラを議題に取り上げました。4月から500人以下の事業体もパワハラ防止法の対象となり、国際自動車の各営業所も対象に。しかし、同法は罰則規定がないため、会社はいい加減な対応を行っています。こういう姿勢を追及し、パワハラのない職場にしていきます。

 今後の問題は、有給休暇です。有休を申請すると、その日を休日出勤の日にし、休日出勤の日を普通の勤務日にして有休を取らせない仕組みになっています。この仕組みを変えること、メーター検査への賃金未払いの追及も行おうと考えています。


みんなで組合員拡大

 執行委員全員が組合員を拡大しています。残業代裁判勝利後の組合拡大は約10名。国際全労に入ったら会社からいじめられると思う人もいますが、会社にいじめられても国際労働組合は何もしてくれないから国際全労に入る人もいます。

 団交以外に、営業所で問題が起こったら営業所独自で所長と交渉できるようになってきました。こういう状況を作れたのは、執行委員会での討議です。顧問弁護士の見解もいただきながら、法律や判例を調査して団交の反省点、追及点を議論しています。組合拡大についても、どうして入ってもらえたか報告を聞き、さらに拡大するために何が必要なのか議論しています。

 ホームページも、どういう項目が必要か、誰が原稿を書くか、執行委員会で議論し、ようやく作成できました。URLは https://kmzenrou.com/ です。読者の皆さんもぜひご覧ください。

 4大タクシーの1社で、会社と闘う組合が組合員を拡大しています。この取り組みを強化し、国際自動車を労働者の生活と権利が守られる会社にしていくために、頑張ります。

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