2022年09月16日 1739号

【東京・荒川/区立幼稚園に廃園計画/市民が反対に立ち上がる】

 東京都荒川区で、公立幼稚園の廃園案が7月1日に突然発表された。現在の8園から4園への削減と、1つの園のこども園での幼稚園部門の廃止だ。それに対し、「地域で育つ子どもを大切にする荒川区でいてほしい」と、市民有志が「公立幼稚園の問題を考える会」を結成。7月初旬から廃園反対のミーティングを行い、街頭宣伝と署名運動に立ち上がった。

 「幼児教育・保育の無償化」があるから、私立幼稚園に入ればいいという簡単な問題ではない。運動に参加することを決意したSさんは「私立で断られた、支援が必要な子どもはどうするのか」「通園時間が伸びる」など私立や遠い公立に通うことでの不都合≠述べる。「制服代やイベント費用などは公立の5倍の園もある」と私立に行かざるを得ない家庭には、相当な金銭的負担がのしかかる。

 Sさんは公立教育の素晴らしさを損なうことになる危機感を街頭で切に訴える。「区立幼稚園の先生方は、遊びの中から年齢に合わせた学びを取り入れられるように、都や区の研修で培ってきた経験で子どもたちを育てて下さっている」。この思いは、多くの区民が共有しているはずだ。荒川区各所で行われた4回の街頭署名では、約300筆の区民の声が集まった。

 「荒川区は、保護者や教員が中心の粘り強い運動によって、公立幼稚園の存続を守ってきた」と運動参加者は熱っぽく語る。その長い運動の成果は、約300人、470件というパブリックコメントにたくさんの存続を求める意見が寄せられたり、街頭署名でかけられる署名運動への励ましの言葉などにあらわれている。区側は「少子化」「共働き家庭の増加」などもっともらしい廃園理由を述べるが、区民の声を無視することができるのか。

 たった1回の説明会。その場で「廃園になると残った園に人が増える。ある園の自転車置き場は狭い」と改善策を質問すると、「部署が違うので、答えられない」と逃げの答弁。そもそも住民への周知も不十分だ。「教育は区の重要課題なのに議論が少ない」と運動参加者は憤りをあらわにする。

 雨が降る中でも行った街頭署名やQRコードからの署名を合わせて4185筆が集まった。他県からや学生からも賛同が寄せられている。8月31日に第1次署名簿を提出。廃園ありきで進める荒川区に無視はさせない。




公立幼稚園の問題を考える会
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