2022年09月23日 1740号

【明日をつくるなかまユニオン《第9回》/「生存権保障」に値する雇用の再生を!/首都圏なかまユニオン委員長・伴幸生】

自治体で進む雇用破壊

 自治労連(全国自治団体労働組合連合)が自治体で働く不安定雇用労働者に行ったアンケート調査(1万3762人回答)結果が公表されました。事務職だけでなく、保育士・放課後児童支援員・図書館司書など住民にとって必要不可欠な職種を担っている労働者の86・3%が女性、年収も200万円未満が59・3%も占めるというものでした。

 「貸与型奨学金」(学資ローン)の返還猶予適用基準が年収300万円未満であることを考えると、日常生活さえままならない公共の担い手≠ェ大量に存在していることになります。

 「行政改革」「規制緩和」の大合唱の中で、住民の命と暮らしを支える地方自治体の業務が歪められ、住民にとって欠かせない業務の担い手が不安定雇用労働者に置き換えられてきた結果が、この調査にも現れています。公共を担う労働者が生存権保障に値する労働条件の下で働き続けられるように、「会計年度任用職員」制度や「業務委託」による派遣・契約社員を多用する自治体行政を抜本的に改める必要があります。

「新しい資本主義」の名による攻撃

 岸田政権は、安倍元首相の「国葬」に多額の税金を投入するだけでなく、「新しい資本主義」を実現させるとして軍事費・脱炭素・子育ての3分野を来年度予算編成で重視するとします。しかし、この間の物価高騰・実質賃金の低下といった市民の暮らしを直撃している経済状況を変えようとはしていません。

 そればかりか、「解雇金銭解決制度」の導入をはじめとした雇用破壊を一層推し進めようとしています。そのため、「シフト制労働」や副業・兼業を推進し、「ダブルワーク」を前提とした「フリーランス保護法制」「勤労者皆保険」制度導入を呼び水にして、日本を不安定雇用社会にしてしまうことが狙いです。

ユニオンが定期総会

 首都圏なかまユニオンは8月の第22回定期総会で、不安定雇用拡大・労働法制の解体を進める岸田政権の「新しい資本主義」、「解雇金銭解決制度」導入をはじめとした「首切り自由」社会を止める闘いを進めていくことを決めました。

 総会では、派遣先と派遣元両社に対する団体交渉と労働委員会あっせん制度を活用して、3年期間制限違反・契約中途解除となった組合員の闘いで、派遣先・元両社が謝罪し不当な「雇止め」に対して連帯して解決金を支払うこととなった事案が報告されました。

 また、Amazon社に代表される「業務委託」契約によって労働法制の保護や社会保険負担を逃れる「働かせ方」に対し、労働者性があるとして権利の回復を要求し団体交渉を開始していることも報告されました。

 「派遣」や「出向」を偽装した「業務委託」労働者を作り出しながら、「自由な働き方」を口実にして労働法の保護を受けない不安定雇用労働者が大量に作り出されています。

不安定雇用撤廃の闘いへ

 正社員であっても、「(コアタイムのない)スーパーフレックスタイム」導入や、業務を特定しない「ジョブ型」雇用による「定額働かせ放題」という正社員が作り出されています。改正労働者派遣法を悪用して「正社員」の派遣労働者化さえ進める企業も出ています。

 岸田政権による雇用総破壊を許さず、生存権保障に値する雇用確保や全国一律最低賃金1500円以上、大幅賃上げ実現など労働条件を抜本的に改善し、すべての労働者が安心して働き生活できる取り組みを進めたいと思います。

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