2022年09月23日 1740号

【議会を変える、市民と変える 京都府向日市議 杉谷伸夫 大企業への課税優遇 ―違法訴え住民訴訟へ】

 京都府向日(むこう)市のJR駅近くに広がる市街化調整区域(市街化を抑制する区域)を、日本電産(株)が異例の形で開発しています。その土地に対し、向日市が「農地」として格安の固定資産課税をし、数千万円の損害を与えているとして、市民2人が6月に住民監査請求をしましたが(うち1人は私、本紙1735号で報告)、8月下旬に訴えが棄却されました。

 結論を要約すると、(1)具体的な地目・税額等について、職員から守秘義務により説明できない旨回答され課税実態は不明であるが、(2)土地区画整理事業中の土地に現況に基づく課税(宅地課税)をするには、周辺の道路や上下水道などのライフラインの整備が完了した段階で行うのが妥当なので、市の課税に問題はないというものです。

 (2)は、市の担当部署の主張を鵜呑みにしたもので、現実とかけ離れています。この土地には、昨年秋にビル建設がほぼ完成し今年7月から本格稼働しています。全体の整備の完了はいったい何年後か?それまで「農地」課税を続けて良いはずがありません。土地にビルを建設しているのですから、その価値に応じた課税をするのが当然です。

 (1)は、地方税法により関係職員に課された課税情報の守秘義務ですが、不適正な課税が行われても市民が知ることは困難です。大企業など資産家の利益を守るため、市民の知る権利は二の次が実態です。

 向日市では、この地区をはじめ市街化調整区域の農地の変則的な手法による開発が進んでいますが、3年前には都市計画マスタープランを改定し市街化調整区域の農地すべてを、従来の田園緑地地区から、用途調整地区(産業系の土地利用を検討する地区)に変更する土地利用方針の重大な変更が、大半の市民が知らないうちに行われました。

 進出企業、関係地権者と役所の一部で決め、大多数の市民不在で開発が進む中で、今回の課税の優遇問題も出てきたと思っています。次は住民訴訟です。この取り組みを、税だけでなく開発・まちづくりのあり方を考える契機としてゆきたいと思っています。

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