2022年09月30日 1741号

【国際平和デーに戦争あおるな/「政府の行為によって…」惨禍招かぬ決意を】

泥沼化する戦闘

 9月21日は国連が定める国際平和デーだが、ウクライナに平和がもたらされる気配はない。

 9月に入り、ウクライナ軍は東部を占領するロシア軍に攻撃をしかけ、敗走させたと報じられている。ゼレンスキー大統領は「すべての地域でウクライナ国旗が戻ってくることになる」と南部クリミア半島や東部ドンバス地方奪還の意欲を見せている(9/15読売)。

 ウクライナ大統領府はこうした「攻勢」を背景に、あらたに「安全の保証」案を示した(9/13読売)。NATO(北大西洋条約機構)加盟断念、中立化などを内容とする3月の提案を大きく変え、NATO加盟、中立化を拒否。ゼレンスキーはロシアを排除した国際条約「キーウ安全保障盟約」の締結を主張する。

 一方、ロシアはこの提案に「ロシアの脅威」と反発。それまでロシアが申し入れていた停戦協議はウクライナに拒否された。

加害者は誰だ

 ロシアの軍事侵攻から7か月。犠牲者の数は正確にはわからない。国連人権高等弁務官事務所がウクライナ市民の死傷者数を1万数千人としているが、どれだけ実態を把握できているかは不明だ。兵士に至っては両軍の駆け引きもあり、実態は明かされない。街が破壊され、生活を奪われた人は何百万人にものぼる。

 その数がたとえ一人であっても、市民も兵士も戦争の犠牲者である。被害を与えた加害者はだれか。他国の領土に軍隊を送ったプーチン大統領であり、徹底抗戦を主張するゼレンスキー大統領である。武器をおくり戦争継続をあおる欧米各国指導者であり、軍需資本だ。まるでゲームを見るかの様に戦況を解説し、勝敗にのみ興味を誘導するマスコミ報道も加えなければならない。

 無条件の即時停戦、軍隊の撤退以外に、これ以上の戦争被害を防ぐ方法はない。
13日に開会した国連総会は20日から各国首脳が一般演説を行う。国際平和デーを意味あるものにするなら、すべての発言者は即時無条件停戦を主張しなければならない。まして世界各国の課題とする物価高の原因をウクライナ戦争だとしているのなら、真っ先に停戦を呼びかけるべきではないか。

軍拡にひた走る岸田

 ウクライナ戦争の継続に加担する日本政府は、アジアでも軍事緊張をあおっている。

 史上最高額5兆5947億円を次年度概算要求した防衛省は、ウクライナ軍が「人的被害を抑えつつ大きな戦果をあげている」とし、無人攻撃機を数百機規模で配備するという。中国大陸を射程にとらえるミサイル群の配備など、侵略態勢を着々と強化している。

 「専守防衛」からの大転換を正当化する軍事3文書の改定作業を進めているが、議論の内容は隠したままだ。

 外交・防衛の基本方針を示す「国家安全保障戦略」をはじめ、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の3文書改定のために、1月から17回にわたり有識者会議を開いている。だが、各回の議事録はなく、箇条書きのまとめ「議論の要旨」を9月になってやっと示した。どんな議論がされているのか、ほとんどわからないが、「反撃能力」や「軍事費GDP比2%」など政府の方針を裏打ちするものになることは確かだ。

 岸田政権は「台湾有事」を騒ぎ立て軍拡を正当化している。だが、今年9月29日は日中国交正常化50周年にあたる。1972年、中華人民共和国を唯一の中国政府として「戦争状態の集結」を確認しあった。中国代表の周恩来は「日本人民と中国人民はともに日本の軍国主義の被害者である」と述べた。互恵外交・対話こそ平和への道だ。

 国連総会で岸田首相は「法の支配による国際秩序の重要性、国連の機能強化」を訴え、親米グループとして中国・ロシア非難の論陣を張った。いままさに、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることがないよう」(憲法前文)、戦争加害者である政治指導者と犠牲となる市民・兵士を区別しなければならない。

 ウクライナへの支援連帯は戦争犠牲者である市民への支援であって、戦争継続を望むゼレンスキーの支援であってはならない。

   *  *  *

 「国家」と「国民」を同一視させる仕掛けには警戒が必要だ。「国葬」という国家儀式もその一つ。だが、「安倍国葬」は逆に政府への不信感を高めることになった。戦争国家への道をひた走りにしてきた安倍が連呼した「国難」。カルト集団の手を借り選挙に勝利してきた「憲政史上最長の政権」がいかに危ういものだったのか。どれほど強調しようと過ぎることはない。

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