2022年10月07日 1742号

【シリーズ《DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)ニックの アメリカレポート》《第1回》/スターバックス労働者を支えたシップ・イン=z

 全米最大の社会主義団体DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)は、米国社会に変革のうねりをつくりだそうとしている。そのメンバーたち、ともに闘う人びとは、地域や職場でどのような活動の日々を送っているのか。米北西部在住のDSAメンバー、ニック・ワトキンスさん(28歳)から報告を寄せてもらう。(隔月掲載予定)



 米北西部ワシントン州の大都市、シアトルの北に位置するスノホミッシュ郡。人口は約71万人。私はここ、スノホミッシュ郡のDSA支部に最近加入した。

 今回、私たちが活動を行ったのは、郡庁所在地のエベレットという都市。20世紀初めにはワシントン州社会党の本部があったなど、労働・社会主義運動の歴史が豊かな街だ。

 私たちが参加したのは、スターバックスで働く労働者を支持するためのシップ・イン=B「飲む」を意味する「シップ」と「座り込み」を意味する「シット・イン」を合わせた、「飲み物を持って座りこむ」という意味だ。シップ・インが行われた9月5日は祝日の「労働の日」。連休中に全米のスターバックス100店舗以上でこのような労働者支持の活動が行われた。

慌てた店長

 エベレットのシップ・インを企画したのは、この店舗で働くトム・ボッサーマンさん。トムさんはスターバックスで16年間働いていて、労働組合「スターバックス・ワーカーズ・ユナイテッド」の交渉委員会に所属している。「この仕事は厳しいです。はっきり言って、会社は労働者に対して虐待的です」。シフトが終わったトムさんは言う。彼の時給は、16j50k(約2400円)。ワシントン州の最低賃金14j49k(約2100円)と2jしか変わらない。組合は、賃金引き上げの他に、シフト制の改善や服装自由化などを会社に求めている。

 エベレット店舗のシップ・インは、午前8時から11時までの3時間。合計30人ほどの支持者が参加した。DSAのメンバーはもとより地元の労働組合員なども多く参加し、一時は店内のほとんどのテーブルに支持者が座っていた。私たちはペンと紙を用意し、参加者に労働者へのメッセージを書いてもらう。ゴミ箱の隣にもペンと付箋を用意し、たまたま訪れた客もメッセージを書く様子が見られた。

 もちろん、シップ・インは店側の許可を取らずに行っている。書いたメッセージを店の中に置くと、店長が慌てて片付けに出てくることが何度もあった。労働者側ではなく、会社側を代表する店長を困らせることができたのは、成功の証ではないだろうか。

 シップ・インは、店で働く労働者への支持以外にも、地元の左派や組合員の交流の場ともなった。トムさんと話していると、労働組合のTシャツを来た人が挨拶に来た。地元の郵便局組合の労働者だ。こんな風に、目の前で労働者同士の連帯が築かれていた。

 郡の外からやって来た人にも出会った。声をかけると、ネットで今回の活動を知ったという。この活動をきっかけにDSAに加入し、後日行われた支部の「労働・ストライキサポート」会議にも早速参加してくれた。

何かするしかない

 これまでも、スターバックスで労働組合を立ち上げる運動は数十年にわたり何度もあったが、どれも失敗していた。トムさんも、以前働いていた店舗で組合結成を試みたという。なぜ今、全米でスターバックス労働者の組合化が急速に広がっているのか。トムさんは、今を「歴史的に正しい瞬間」だと語る。それは、若い労働者が給料の低さを見ただけで、改善の必要性を理解するからだ。「たとえこの仕事を辞めて違う仕事に就いても、結局一緒です。私たちは逃げることはできないから、何かをするしかない」。トムさんはこう述べる。「だからこそ今、ここで、労働環境を改善しなければいけないのです」

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