2022年10月07日 1742号

【未来への責任(358) ノー!ハプサ 結審阻み当事者陳述へ】

 9月9日、ノー!ハプサ第2次訴訟控訴審第5回口頭弁論が東京高裁で開かれた。コロナ禍で傍聴参加が心配されたが、多くの方が駆けつけてくださり、用意した資料が全て無くなるほどだった。

 前回の第4回口頭弁論では歴史研究者の樋口雄一さんの証人尋問が実現した。樋口証人は、「内鮮一体」の内実は天皇制に対する服従を求めるものであり、朝鮮人の意識とは大きな矛盾を抱えていたことを具体的に明らかにした。原告弁護団はこの証言を補強する準備書面を提出。「『内鮮一体』とは、朝鮮人に対して徹底して『皇国市民』としての自覚を促し、日帝の支配に従属することを要求したのであった。しかも、絶対に日本人とは平等にならない。これは天皇に対する無限の忠誠を強要する論理であり、このような論理のもと、徴用や志願兵、徴兵制などの強制動員が行われ、天皇制支配体制が貫徹された」と訴えた。

 そして、この関係性は日本の敗戦、朝鮮半島の解放で解消したわけではない。靖国神社は原告らのお父さんを天皇のために死んだ英霊として祀り、合祀取り消しを拒否している。2005年に韓国のKBS主催で開催されたシンポジウムでも東条英機の孫である東条由布子が李熙子(イヒジャ)さんに対して、「お父さんを日本がお祀りしていることに感謝すべきだ」と言い放った。

 今回の裁判に提出された陳述録取書の中で、李熙子さんは「日本の侵略戦争にかり出され死なされた、私の父のような数多い戦争の犠牲者、そして家族の死により言葉では計り知れない苦しみに逢った、私のような遺族の痛みには全く共感できない東条氏の発言は、すべての犠牲者や遺族を侮辱することであり、絶対に許せない反人道的、反人権的な発言」と厳しく批判した。

 訴訟進行について弁護団が意見を表明しようとしたところ、裁判長が「証人については採用せず、裁判は終結することにした」と発言。弁護団は直ちに「現在、コロナ禍で原告らは裁判に出廷したくてもできない状況だ。このまま当事者が参加できない状況で日本側だけで決めてしまっていいのか。政府が海外渡航を緩和する方針を示す中で、来日できる可能性は高い。当事者の意見を聞くという姿勢が裁判所としても必要だ」と訴えた。

 これを受け裁判長は3人で合議するために中座。「(今日ではなく)次回で弁論は終結するが、原告らの意見をお伺いする時間を取る」と説明。弁護団の訴えと支援の傍聴で、当事者抜きの終結は何とか免れた。

 次回裁判は2023年1月17日午後2時から約2時間、東京高裁101号法廷で行われる。久しぶりに韓国から原告らをお迎えしての裁判となる。ぜひとも成功させたい。

(ノー!ハプサ〈靖国合祀取消訴訟〉・山本直好)

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