2022年10月14日 1743号

【ミリタリーウォッチング 青天井の防衛省概算要求 金額隠し攻撃兵器100項目】

 防衛省は8月末、2023年度予算案の概算要求『我が国の防衛と予算』を公表。「国際社会は新たな危機の時代に突入する」と規定し、「概算要求基準で定められた要求」に別途「金額を示さない事項要求」を加え、「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」と公言した。

 防衛省はこの「事項要求」を100項目以上盛り込んだ。これまでは、事前に「見通し」が立ち難いとする米軍関係経費を除けば、概算要求では「事項要求」はあまり行われていなかった。

 今回、その「主要事項」の筆頭に挙げられたのが、敵の射程圏外から攻撃できる長射程のスタンド・オフ・ミサイルだ。これは敵基地攻撃にも転用可能な装備で、既存のミサイルの射程を1千キロ程度に伸ばす改良費に272億円を計上した上で、量産費用を「事項要求」とした。攻撃型の無人機の導入も盛り込まれた。

 自民党は軍事費をGDP比で現在の約1%から2%以上に上げろと主張。軍事力強化をあおる大合唱が行われている。

 2年前に導入を断念した陸上配備型ミサイルシステム「イージス・アショア」に代わるイージス・システム搭載艦の建造に向けた経費も「事項要求」となった。陸上の2倍のコストがかかりながら運用できる期間は1年の3分の1程度と、「軍事専門家」すらも疑問視していたしろものだ。

 総額費用を含む計画の全体像をなぜ明らかにしないのか。「事項要求」のふたをしたまま、年末の予算編成でに一気に決めてしまおうというのは、批判世論をごまかすやり方でしかない。

 政府は「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」の軍事3文書の改訂作業を進めている。来年度はこれらを反映する最初の予算だ。

 軍事力の全体像が市民に示されないまま、金額さえも明示しない武器等が100項目以上にのぼる。これが、私たちの国の実態だ。際限なき膨張への懸念を声とし、批判世論を広げなければならない。

 戦争へのロードマップを、私たち自身の力で止めていかなければならない。

 藤田なぎ
 平和と生活をむすぶ会

金額示さず要求した兵器

スタンド・オフ防衛能力

◆12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型・艦発型・空発型)の開発・量産
◆島嶼防衛用高速滑空弾の研究・量産
◆極超音速(音速の5倍以上)誘導弾の研究

無人アセット防衛能力

◆小型攻撃用UAV

資料(https://www.mod.go.jp/j/yosan/yosan_gaiyo/2023/yosan_20220831.pdf より)
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