2022年10月14日 1743号

【みるよむ(634)2022年10月1日配信 イラク平和テレビ局in Japan イラクの川の水を奪うな―アマラー市民が怒りの抗議デモ】

 イラクの世界的な大河チグリス・ユーフラテス川で、干ばつの被害が広がっている。2022年8月、水不足に苦しむアマラー市の住民が中国の石油企業の門前で抗議の座り込みを行った。サナテレビが市民の怒りの声を伝える。

 アマラー市はバグダッドの南400キロ、イランとの国境地域に位置する。チグリス・ユーフラテス川の沿岸で、ハウィゼ湿原が広がっている。この湿原はイランにまでまたがり、イラク側だけで30平方キロある。水資源が豊富で、家畜が飼われ、魚もよく取れた。

 そんな地域が干上がっているのだ。ひび割れた地面が広がり、家畜の死体が水量の乏しい川面に浮かんでいる場面は衝撃的だ。

 川の水が減ったのは、気候変動による雨量の低下に加え、国境を接するイランとトルコがチグリス・ユーフラテス川の水を途中で奪い取っているからだ。さらに、イラク政府はこの地域の水を取り上げて大都市バスラに送っている。

石油利権のため追い出し

 水不足に苦しむ住民が、中国の石油企業ペトロ・チャイナに対し抗議デモを行っている。なぜか。

 サナテレビが解説する。水不足が放置されているのは「石油が豊富なので、この地域から住民を追い出すことが目的なのだ」。

 ペトロ・チャイナは石油利権を確保するために地域住民を追い出そうとしている。しかも、この会社で働くのは中国本国から連れてこられた刑務所の服役者だという。イラク労働者の雇用はない。

 トルコやイランが水の資源を奪い、中国石油企業がイラク政府と手を組み住民を追い出す―こうした構図は、グローバル資本、イスラム政治勢力が結託する現在の支配政策を端的に示すものだ。しかし、これに対し市民は生活と権利を求めて石油企業の門前で闘いを進めている。声を上げるイラク市民と連帯しよう。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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