2022年10月21日 1744号

【円安―物価高の根源に円の価値下落 対抗するには賃上げ、消費税減税だ】

 外資アパレルチェーンのGAPやH&Mなどが次々と閉店、日本からの撤退を加速させている。この動きは2015年ころから進み、2021年の日本国内合計売り上げはピーク時より半減した。外資アパレルの多くは「少子高齢化と経済の停滞で所得と消費が落ち込む日本には将来性が無い」(『現代ビジネス』8月9日号)と見ているのだ。

 これは、アパレルという分野での限られた現象なのだろうか。衣食住という基本的な要求の中で衣にかける出費を減らさざるをえない状況が見て取れる。流行の服を買うささやかな楽しみを失うほど、収入減と貧困化が進んでいる。ここに、円安と円安がもたらす物価高が追い打ちをかける。

 改めて、円安の背景となっている現在の円の実力=i価値)を見てみよう。

半世紀前と同じ円の状態

 9月1日、1j=140円台に下落したとき、24年ぶりの低水準になったと大々的に報じられた。その後も円安は進んでいる。9月22日、日本銀行による円買い・ドル売りの為替介入がされたにもかかわらず、145円台(10/3時点)にある。

 別の為替関連指標を見ると、半世紀前の水準まで円の価値は下落しており、深刻度はさらに大きくなる。

 この指標を「実質実効為替レート」という。実効為替レートとは、例えば円・jという2通貨間の為替レートだけでなく、日本と他の全通貨との為替レートや貿易取引量などで算出し、「通貨の実力を測るための総合的な指標」(日本銀行)とされる。物価上昇率を加味した実質実効為替レートが、通貨の競争力の実態を見るために多く利用されている。

 日本の6、7、8月の実質実効為替レートは、50台後半だった(2010年=100)。51年前の1971年8月以来の低水準で、最高値だった1995年4月の150・84の半分にも届かない。円の実力(価値)はここまで落ちている。


ビッグマック価格で見る

 さらに、ドルと円の関係を「ビッグマック指数」で見てみよう。これは、マクドナルドのビッグマックの価格を比較して世界各国の購買力を判断する方法だ。

 ビッグマックは、世界中でほぼ同一品質のものとして売られている。その価格は、原材料費や店舗の光熱費、店員の労働賃金などさまざまな要因を元に決定されることから、各国通貨の購買力比較に使いやすいとされる。ビッグマックを他国より安く買うことができれば、その国の通貨の価値は低いとなる。

 日本のビッグマック価格は10月時点で410円、米国では5・15ドル(約750円)。1j=145円として「ビッグマック指数」(%)を計算すると「マイナス45%」。指数では、円の評価は米国より45%低く、アメリカ人が日本でビッグマックを買うと、45%引きで食べられるということだ。

 ビッグマック価格のランキング(7月時点)をみると、日本は対象54か国中の41位。日本のビッグマック価格の低さは、日本の人件費(賃金)がとりわけ安いことを象徴している。


収入増の政策こそ必須

 9月の為替介入の一方で日本銀行は金融緩和の継続を表明した。「円安を抑えるため」として公金を投入したにもかかわらず、低金利の金融緩和策で円売り=円安を促す政策を続けるというでたらめが生じた。岸田政権の無策は明らかだ。

 円安をこのまま放置すると、輸入原材料の価格高騰により物価は一層上昇する。

 これに対抗するには、市民の収入(賃金、年金、社会保障給付など)を増やす以外にない。軍事費を増やすなどあってはならず、軍事費を削って社会保障の自己負担を軽くしなければならない。同時に、世界90以上の国・地域で実施、予定されている消費税の減税を緊急に行うことである。
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