2022年10月21日 1744号

【みるよむ(635)2022年10月8日配信 イラク平和テレビ局in Japan 「汚職に反対、宗派の私兵に反対」/イスラム政治勢力に怒るイラク市民】

 イラクでは2021年10月総選挙以後も政党の権力争いが宗派私兵間の紛争を引き起こし、多数の市民が犠牲になっている。2022年9月、サナテレビはこうした社会状況に抗議する市民にインタビューしたた。

 冒頭の映像は、大勢の市民が「イランにイラクを支配させるな」と声をあげている場面だ。市民活動家のアブ・ミレームさんは「市民が怒っているのは、イランの干渉がイラクで続いているからだ」と説明する。

 シーア派が支配するイランは、イラクで勢力を広げ利権を獲得してきた。最近では、かつてはイランと関係が深かったムクタダ・アル・サドルが独自の支配権確保のために他の勢力と対立している。彼らとその支配下の国会議員たちは、失業や福祉の切り捨てに苦しむ多数の市民をしり目に、石油などの利権を得、汚職と腐敗にまみれている。

 昨年の総選挙後、政権構成をめぐって各勢力が争い、イラクは今、事実上政府がない状況が続き、無数の武力衝突が起きている。

利権のために命を奪う

 「民衆の人気がある」と報道されるムクタダ・アル・サドルは、イラクの状況を「唯一の犠牲者はイラクの市民です」ともっともらしく発言する。その直後、私兵による無差別射撃のシーンが映しだされる。

 サナテレビは「無差別射撃の結果、住宅地で何十人もの死傷者が出た。宗派の私兵どもは武器を持って徘徊し続けた」と批判する。利権のためには市民の命などどうなってもいいのだ。

 市民は怒りの声をあげている。「汚職に反対、宗派の私兵に反対/汚職について話しているあなた方は皆、汚職をしている」と書いた横断幕の言葉は痛烈だ。

 アブ・ミレームさんは「民衆は政治システム全体に対して怒っている。政治制度の新たな社会的合意を作って、ゼロから始める」と述べる。市民は、今の社会を変えようと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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