2022年10月21日 1744号

【明日をつくるなかまユニオン/私にもできた! 退職時の有給休暇取得】

 一人でも加入できるなかまユニオンには、さまざまな職場で働く仲間がいる。家族の介護のため急きょ介護施設を退職せざるを得なくなったAさんの有給休暇(有休)取得への闘いの報告が寄せられた。

 8月末、私は施設長に9月末退職と残る有休15日を取得する意向を伝えました。

 「4有休日ならなんとか調整できる」と施設長は言ってきました。私は「有休はすべて家族の介護と就職活動に充てたい」と言いましたが、施設長に「それで業務の引き継ぎはできるのか」と言われ、その場では、有休は提示された4日のみで了承してしまいました。

 退職届も渡され、9月末日で書くようにと詰め寄られましたが、勤務時間が迫っていたため、その場では記入せずに済みました。

 このままだと有休を1日も消化できずに退職となることに気づいた私は、井手窪委員長に相談。アドバイスをもらいました。▽自分の都合のよい退職日を決める▽退職日と有休消化日数を通告しそれを書面やメールで証拠が残る形で行う▽職場を管轄する労働基準監督署に連絡する―です。

退職日と休暇取得を通知

 施設長にメールで、退職日と有休消化日数を通告、労基署にも相談済みであること、労基署からは有給休暇届を認めないのであれば指導すると話があったことを伝えました。

 すぐに施設長から電話があり、面談では「有休の買い取りをしようと思います。でもこれは、特例中の特例。今日は必ず退職届を出してください」と言われました。

 退職届を出すと有休がうやむやにされてしまうと思い、終業後、退職届は出さずに職場を出ました。

違法をただす労基署

 施設長とのやりとりに疲れた私は、委員長に「家のことでいっぱいいっぱいで、会社とこれ以上やりとりする時間がありません。会社に迷惑をかけているのは事実だし…」と悩みを打ち明けました。委員長は、具体的な動きを示して、背中を押してくれました。

 「退職届と有給休暇届を作成し、内容証明として郵送、FAXやメールなど幾重にも提出し、受け取ることを要求すべき。労基署は、違法状態を是正するところなので、有給休暇届を出して受け取らない場合に動き出すことができる。書類を書いて、受け取るか受け取らないかという段階に持っていく必要がある」

法に則った労働者の要求

 井手窪委員長の次の言葉は、私の心に気づきを与えてくれました。

 「経営者は、適切な人員を確保し、労働者が余裕を持って働ける労働条件を作る必要がある。労働者は、それを会社に求める権利がある。経営者と労働者の利害関係は完璧に分かれている。法律は労働者の味方である。我々は違法行為をしようとしているわけではない。法律どおりのことをしてくださいという控えめな要求。労働組合の訴えは実はとてもささやかなもの。まずは、断固として自分の要求は譲らないという価値観を獲得する必要がある」

 そして、10月15日の退職と、15日間の有休を取ることを改めて要求するメールを施設長に送りました。

 施設長からは、15日分の有休は取れない日程が示され、退職届の書き直しも示唆する返事が届きました。

 こちらから、改めて有休が取れる日程を指定して、有休を消化すると伝えました。また、有休を買い取りする場合には、必ず15日分の買い取りが保障されるという書面を提示するように伝えました。

 次の出勤日に施設長が「Aさん、メール見ました。有給休暇届と退職届の手続きをしましょう」と言って、事務室に向かいました。

 その時にはもう、こちらが要求した有休15日分の届と指定した日の退職届の手続きが行われ、私の有休取得に向けた闘いは静かに終わりました。

組合の力で勝ち取った

 同僚に今回のやりとりを話したところ「自分がもし有休を取得できない場合や退職勧奨を受けたら、なかまユニオンに相談する」と言う人もいました。

 私は今回、経営者対個人の労働者という立ち位置ではなく、権利を主張する労働者が連帯することで経営者対労働組合として交渉すること、それが労働者にとっていかに力強く、尊く、社会にとっても重要な存在であるかに気づかされました。

 今回の経験を活かし、これからもなかまユニオン組合員として、がんばっていきたいと思います。

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